02.転移の門

 頑張れ、俺。

 俺達ならできる、ドーソンのみんなを救うんだ。



「お、俺た「私達が、転移魔法でお前達をドーソンに送ってやる!」・・・」


 カルディアの声にかき消された・・・。

 どうやら、お姉さんの言葉に触発されたのは、俺だけじゃなく、カルディアもだった。でかい声で言い切った。

 その後、めっちゃ注目されて顔を真っ赤にしてる。


「あのエルフのねーちゃんは、純白のコップじゃねーか」

「Dランクで40階層のオーガ倒した奴らだろ」

「あの病んでる魔女がいるとこだろ」


 ギルドのお姉さんが、拡声魔道具を持ってカルディアのそばに来た。


「みなさん聞いてください!Dランクで40階層のボスを倒したパーティの純白のコップが私たちをドーソンに送り届けてくれるそうです!お願いします。カルディアさん」


 急に拡声魔道具を差し出されて、受け取ったカルディアの手は震えていた。顔は、真っ赤だ。無理しやがって。カルディアの震える手を握る。

 カルディアがこっちを一瞬みて、ぎゅっと強く握り返して来た。


「私たちが、お前達をドーソンに送り届ける。転移魔法を使えば、ドーソンと王都を繋げて行き来できるようにできる」


 いいぞ、純白のコップ!

 ・・・ディア!カールディア!カールディア!


 どこからともなく、カルディアコールがかかる。

 クライマックス感がすごい。まて、おまえら、まだ始まってすらいねーからな。


 お姉さんが拡声魔道具を受け取り、コールを制御して今後の予定を話しだした。さすがだ。


「では、これより、各自討伐の準備を整え、ギルドの受付に集合してください。純白のコップの準備が整い次第、転移します!では、一時解散」


 皆、足早にギルドの会議室を出て行く。やる気満々だ。



「タケシ、ありがとう。よーし!ドーソンを救うぞ!」


「お、おう。わかった。やろう」


 とりあえず転移作戦を考える。


「ドーソンに今転移できるのは俺だけだから、まず、俺が転移のドアを開く。俺とカルディアでドーソンに行こう。そして、カルディアが王都に向けて転移の門を開くんだ。俺のよりでかいから、同時に数人が転移できる。もし、アディさんが来てくれたら、王都側からも門を開いてもう。そうすれば、もっと多くの人を転移できる」


 これで行こう。

 ギルドのお姉さんにも作戦を伝えて、準備ができたら実行することになった。

 

「マークかエリサ、悪いけどアディをーー」


「大丈夫よ、タケシ君。もう来てるわ」


 すでにいた。


「エリサが呼んでくれたのよ、あなたがカルディアの手を握ってる時に。作戦も聞いてるから大丈夫よ。任せてちょうだい」


「そ、そうですか。よろしくお願いします」


 とりあえず、討伐の準備もしないと。みんなでギルド併設の売店にいって回復薬とかを多めに準備した。魔法が使えない時にために。

 一通り必要なものを購入したので準備OKだ。

 受付に行き、お姉さんに準備完了を告げ、作戦実行に移った。


 では、まず第1弾として、俺がドーソンにいるであろう、ガイさんの魔力を追ってどこでも○ア転移のドアを開ける。

 王都ギルドのお姉さんも行くことになった。


 どうか、無事でいてくれ。あとトイレとか行ってないでください。ガイさん。

 この前の、アディさんのお風呂事件がフラッシュバックする。


 思い切ってドアを開けると・・・



 ギルドの受付だった。あっぶね。

 目の前には、怪我をしている冒険者たちが、力なく座っていた。

 生気がない・・・。


 あぶなかった、遅れてたらどうなっていたことか・・・。


「た、タケシか?」


 ガイさんの声が、ドアの後ろから聞こえて来た。


「ガイさん!お久しぶりです、無事でよかった」


「おお、タケシか、いきなりドアが出現して焦ったが、これはなんだ魔術か?」


「そうです、魔術のようなものです。これで王都と行き来できるんですよ、状況はどうーー」


「ガイ!」


 ギルドのお姉さんが、ガイさんに抱きついた。


「ミナ・・・よせ、そんなことをしてる場合じゃない」


「ご、ごめんなさい。つい・・・無事でよかった。紹介するわ、こちら王都からドーソン支援にきた純白のコップのみなさん」


 え?こ、これは・・・おや、あの助けては、そうゆうことですか。

 まったく、困ったものですなぁ。


「そうか。タケシのパーティか、いい仲間に出会えたようだな。いろいろ話したいが、これが終わってからだ」


「わかりました、ちょっと待ってくださいね。今うちのパーティメンバーが、もっとでかい転移の門を開きますので。カルディア頼んだ」


「まかせろ。外に開いた方が良さそうだな、天井が低いから。いってくる」


 そういって、ギルドの外にでかい門を作って王都のギルドの外に繋げた。

 そして、その隣にアディさんの門も出現して開いた。


 これで一度に10人ぐらいが同時に行き来できるぐらいの広さの門が開いた。

 門を維持するために、カルディアとアディさんは、転移魔法に魔素を送り続けることになった。




「こ、これは、すごい」


 門を見たガイさんが驚いてる。

 それもそうだろう。いきなり王都と繋がるなんて、色々とんでもない状態だ。

 ファンタジーだからなせる技だな。


「ガイ、王都のCランク以上の冒険者に緊急指令がでたの、だから、見てほら」


 ぞろぞろと、屈強な冒険者たちが門から出てくる。映画のワンシーンのようにスローモーションに見えているのは俺だけだろう。

 ドーソンの冒険者たちに生気が戻り、歓喜の渦に包まれた。


「よし、冒険者の転移と並行して、隣の門で、残ってる街の住人や病人や重傷者を王都に移動だ」


 ガイさんが的確に指示に出し始めた。

 そして、あらかた王都の冒険者が出てきたのを確認して、ガイさんが喋り始めた。


「王都の冒険者の諸君。ドーソンのギルドマスターのガイだ。今回の緊急指令への参加、心から感謝する」


 拡声魔道具も使ってないのに、でかい声であたりに響き渡る。

 え、ガイさんギルドマスターだったの!?一切そんな話聞いてない。


「今、ダンジョン前の最前線に、AランクパーティとDランクパーティ達がいて頑張ってくれている。彼らはすで疲弊しきっている。頼む。彼らを助け、魔物の討伐を引き継いでくれないか」


 兄貴達・・・無事でいてくれ・・・。

 今度は、拡声魔道具を持ったミナさん(王都の受付のお姉さん)が喋り始めた。


「王都で部隊編成した通り、まずは第1部隊に割り当てられた人たち、前に出て来てください」


 第1部隊になった人たちが、ガイさんとミナさんの前に集合する。


「よし、第1部隊の諸君。これよりダンジョン前の最前線に向かう。今、無理そうだと思うものは、抜けてもらって構わない。大丈夫、ペナルティなんて私がさせない」


 誰も離脱するものはいなかった。さすがCランク以上の冒険者だ。覚悟が違うのかもしれない。


「全員の協力に深く感謝する。では、私に付いて来てくれ。魔物どもに目に物見せてやろうではないか」


 こうして、ガイさんと第1部隊の冒険者たちは最前線に向かって行った。


 ちなみに、俺たち純白のコップは、第2部隊だ。

 第2部隊は、第1部隊の後ろで交代まで待機することになっている。 

 そのため、そろそろ出発する時間になりそうだ。


 エリサは、静かに。壁に寄りかかって待っている。

 あれ、マークがいない。


 あいつどこ言ったのか、あたりを見回すとアディさんの転移の門を見つめていた。

 あ、なんかこの展開、絶対聞きたくないことを言いそうだなこいつ。


 マークが俺に気がついて、寄って来た。


「すまない、もうそろそろか」


「お、おう。そろそろだ。行こう」


「なぁ、タケシ。俺この依頼が終わったらーー」


「おいバカやめろ、それ以上は喋るな。マーク頼む、その先は言わないでくれ。ジンクスみたいなものだ。詳しくはあとで話す」


 危ない危ない。不用意にフラグを立てるなって。マジで。


 とりあえず、フラグはへし折っていくスタイルだ。

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