第2話
今日も私は昨日と同じ砂浜への道を軽い足取りで歩く。そして私は昨日と同じように砂浜に立っている彼に声をかけた。
「やあ」
「やあ、今日も来れたんだね」
「うん、昼間は部屋の片付けだったりして忙しかったんだけど、夕方はなんとか時間を作ることができたよ」
「昨日と同じ時間になっても来なかったから今日は来ないのかと思っていたよ」
「そうだね、昨日よりは少し遅くなっちゃったのかもしれないね」
海斗君は昨日と同じ様にそこに立っている。本当に不思議だ。何故いつもこんなところにいるのか、いつかは本当の話を聞きたいものだ。
「あ、そーだ!明日からとうとう学校だね
私もとうとう高校生か、花のjkだよ。なんか早いね」
「そう?僕は別にそんなこと感じないけど
それに高校生になったところでそれでって感じ僕にはそんなの関係ないよ」
「関係ないってどういうこと、関係あるよ。海斗君も明日から同じ高校生なんだよ」
「そうだね」
海斗君はどこか寂しそうにそう答えた。
そして、私たちはその後少し話をして別れた。その日の夜、私は寝付けなかった。明日の学校のことを考えると眠れそうにない。そう思っていたけれど、気づくともう朝になっていた。
緊張の面持ちで私は学校へ向かう。地元の子がほとんどだという港高校へ。校門をくぐるとき海斗君を見つけた。
「おはよう!」
「おはよう」
海斗君と同じクラスになれたら嬉しいな。そう思っていたけど、クラス表を見たとき私は驚いた。一クラスしかなかった。そんなこと考えもしていなかった。そんなことを考えていると隣から女の子に声をかけられた。
「はじめまして、花岡 咲良です。よろしくね。この学校に外から来るなんて珍しいね、基本は地元の人しか来ないと思ってたからさ。だからこのクラスのみんなのことはもう知ってるんだ」
咲良さんはそう言った。そのことにも驚いた。みんな知り合いなんだと考えると余計に心配になってくる。
「はじめまして。一ノ瀬 光です。最近こっちに引っ越して来たんだ。こちらこそよろしく」
この町のことなんかを咲良に聞きながら私たちは教室に向かった。教室に入ると知らない私に興味があるのかみんなが寄って来た。
「よろしく〜」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
「名前は?」「どんなの好き?」
色々な声が周りから飛んでくる。私はそんな質問を丁寧に返しながら、海斗君の方を見た。
彼は一言、二言クラスメイトと話をして、その後は一人でずっと本を読んでいた。
放課後、咲良が声をかけてきた。
「入学式の日だし、親睦会も兼ねてみんなでカフェ行こうよ。田舎だしそれくらいしかないし」
「お、いいね、いいね」
元気がある少年、水谷 祐也がそれに続いた。
「もちろん、光もね」
咲良は私のことも誘ってくれた。カフェでみんなと話をして、その後カラオケに行った。楽しかった。みんなとはうまくやれそうでよかった。だけど、そこに海斗の姿はなかった。
「あの、海斗君は来ないの?」
祐也が答えてくれた。
「海斗のこと知ってるんだ。あいつはいつも来ないよ。誘ってるんだけどさ。無愛想っていうか、あんな感じだからさ。別に悪いやつじゃないんだけどな」
「そうなんだ」
そしてそんなこんなでもう引っ越してきて、高校生になって一ヶ月がたった。みんなとはもうすっかり仲良くなって、放課後はよく遊びに行ったりもしている。友達と過ごす東京にいたときと同じ日常に戻っていった。
この一ヶ月の間も私はいつもの砂浜で海と毎日のように会っていた。もはや日課のようになっていた。
そんなある日の放課後、教室で海と話をしていると、咲良が声をかけてきた。
「光、今日みんなで夜ご飯食べ行こうよ。最近はみんなで夜ご飯食べにいってないしさ」
「いいよ。いこいこ」
「海斗、そういうことだから今日は行けそうにないかも。ごめんね。あ、そーだ。海もおいでよ。みんないるし楽しいよ」
「そーだよ。海斗もたまには来てよ」
咲良も私に続いて言った。
「僕は遠慮しとくよ。でも誘ってくれてありがとう。じゃまた明日」
そう言って海斗は帰っていった。
「なんで海斗はいつも来ないんだろうね」
咲良と私はそう言って笑い合った。
このときの私は海斗についてあまりよく知らなかった。
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