第159話・魔導院 聖都サブマ(2)
魔導院の聖都サブマに到着したプリームスとフィエルテ。
到着はしたが不法入国と不正魔法使用をしたとして、防衛隊に拘束されそうになる。
しかし部隊長であるラティオーの計らいにより拘束はされず、とりあえずは身分の確認の為に取り調べをされる事となった。
頑丈な外郭門を抜け、プリームス達は聖都の商業区画に入るに至る。
そして防衛大隊の隊長であるラティオーに連れられて、外郭門に入って直ぐの入国管理局へ案内された。
入国管理局自体は外郭外壁内に建設されている。
どちらかと言うと、入国管理局を建ててから外壁を建築したように思える造りであった。
入国管理局の中を案内されるプリームスは、その物珍しさにキョロキョロと周囲を見渡してしまう。
少し恥ずかしいと思うフィエルテではあったが、その仕草が可愛らしくて癒されてしまいホッコリする。
ラティオーも同じ気持ちだったらしく、
「興味津々ですな、プリームス殿。聖都の商業区画は情報公開されているので、存分に見て貰っても結構ですよ」
と柔らかい表情でプリームスに告げた。
プリームスも年相応の様な可愛らしい笑顔で頷く。
「ありがとうございます」
商業区画の様相はよく整備された石造りの道が印象深い。
そして全体的に白を基調とした造りになっており、清潔感と機能美を感じさせる。
入国管理局の建物内部も街の印象通りで、華美さを排し実用面を追求した様相であった。
「街もそうですが、建物の内部もゴチャゴチャしていなくて清潔感がありますね」
そうプリームスか感心したように言うと、ラティオーが苦笑いを浮かべる。
「うむ、そう言って貰えると嬉しいですな。しかし悪く言えば簡素で、面白みが無いとも言えるでしょう?」
ラティオーにそう返されては、プリームスも苦笑いを浮かべるしか無かった。
そうしてプリームスとフィエルテはとある一室に案内される。
そこは大きめのソファーが2対と、それに挟まれるように大きめのテーブルが設置されていた。
そして足元にはフカフカの絨毯が敷かれている。
この国は派手さや華美を好まないようだが、素材や質が良い物を使っている様であった。
実際ソファーも簡素ではあるが、実に座り心地が良い。
「さて、本来であれば国境で入国審査を受けて聖都まで来るのだが・・・色々な物をすっ飛ばされて、ここまで来られたようですな。まぁ移動魔法が有ると言う事なら、正直国境など意味を成さないか・・・」
とラティオーはソファーに腰を下ろしながら告げた。
部屋にはプリームスとフィエルテ、そしてラティオーの3人しか居ない。
故にプリームスが口外して欲しくない事を口にしたのだろう。
「他国では有事以外で、国境による入国審査は行っていませんから。そう言った意味で私どもの配慮と、魔導院に対する認識が甘かったと言わざるを得ません」
そうフィエルテが言うと、ラティオーは小さく手を横に振った。
「いやいや、こういった食い違いは結構多いのだ。国境で関所を抜けずに入国する旅行者や商人も多い・・・。魔導院の国の仕組みが、他国に浸透していない証拠ではあるな」
そしてラティオーは居住まいを正すと、プリームスへ聴取する旨を告げた。
先ず身分を証明できる書面提示をラティオーは要求する。
これにプリームスは、リヒトゲーニウス王国の大公爵クシフォスから渡された物をテーブルに置いた。
それはクシフォスがプリームスの後見人で有る事を記す書面であった。
しかし魔術師学園の理事長代行として、身分を証明する物が無い。
エスティーギア王妃から口頭で引き受けたと言うのもあるが、代行で有る為に正式な書面が必要無いとプリームスが考えていたからだ。
それでもラティオーは驚いた様子で呟いた。
「リヒトゲーニウス王国の王家と関係があるとは、正直驚きますね」
プリームスはラティオーが鵜呑みした事に首を傾げる。
書面などいくらでも偽造できるものだ。
それを馬鹿正直に書面を信用するのは、只の世間知らずか真正の馬鹿と言えた。
色々な意味で心配になったプリームスは、ラティオーに尋ねた。
「書面を信用なさるのですか?」
「うん? あぁ・・・! 普通なら信用しませんよ」
ラティオーはそう言って、フフフッと小さく笑う。
そしてプリームスを真っ直ぐに見つめ告げた。
「もし何らかの企みがあって聖都に来たのなら、わざわざ魔術師学園の理事長代理などと言わないでしょう」
「もっと信用され易い役職として、しかも正式な建前で訪れるでしょうね」
ラディオーの言い様は御もっともである。
正直プリームスは、力押しで法王に会う予定だったのだ。
建前を繕う為の準備などする筈もなかった。
「では私を信用していただけると? 法王陛下へ取り次いで貰えるのですか?」
プリームスがそう尋ねると、ラティオーは笑顔で頷いた。
「お取次致しましょう。ですが、先に案件の内容を簡易的に陛下へ報告しますので、先ずは私が話を伺いましょう。後は、保安上の意味で魔術が使用できないように処置をさせてもらいますよ」
ラティオーの申し出にプリームスは快く承諾する。
荒事にならないなら、それに越した事はないのだ。
力押しせずとも、思った以上に早く法王に会えそうでプリームスはご満悦であった。
「法皇陛下には、傭兵ギルドのメルセナリオ氏とバリエンテ等3人の件でと伝えて頂ければ分かると思います。それからボレアースの聖女が来たとも、お伝え下さい」
とニッコリ笑顔でラティオーへ言うプリームス。
少し訝しげな表情をラティオーは浮かべた。
「ボレアースの聖女・・・?」
だが直ぐに表情を和らげる。
「私がとやかく詮索した所で詮無い事か。全ては陛下が判断される事だしな」
やはりこの魔導院までは"ボレアース"の話は伝わっていないようだ。
距離にして2週間はかかるのだ、当然と言えば当然である。
しかしこの国の暗部、又は諜報機関が知らない筈は無い。
プリームスが洞察するに、その情報力こそが南方諸国で孤立しながら、永世中立国を保ってきた魔導院の強さなのだから。
そしてそう言った国外の情報は、聖都で防衛任務にあたる者には必ずしも必要では無い。
故に知らされていないのだろう。
兎に角、プリームスは法王に会える事が楽しみで仕方ないのであった。
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