第114話・問題児の実力(1)

プリームスは最終確認と称して、バリエンテ達3人の実力を見たいと言いだした。

見せろと言われれば、それは吝かでは無い。

しかしそれにどのような意味があり、そもそもどこでそれを見せるのか問題であった。



「取り合えず外に出よう」そう言ってプリームスはさっさと部屋を出てしまう。



慌ててプリームスの後を追うバリエンテ、イディオトロピアとノイーギアの3人。

途中、寮内の廊下で他の下級学部の生徒と出くわし、その生徒が呆然として固まっているのを目にする。

恐らく絶世の美少女であるプリームスを見てしまったからであろう。



何を隠そうバリエンテ達もプリームスを初めて目にした時は固まってしまった。

そして1時間だけだが、プリームスが見学していた授業も皆上の空で受けていたのだ。

それはバリエンテやイディオトロピアとノイーギアも皆、プリームスに見惚れていたからだ。



今は何とか慣れて固まる事は無くなったものの、プリームスを直視するにはまだまだ時間がかかりそうであった。





寮からでるとプリームスの前2人の影が立っていた。

2人とも仮面を着けて顔は分からない。

だが動き易さと暑さ対策か、露出度の高い服装が体の線を強調してどちらも女性だと物語っている。



そして黒く透き通るケープが幻想的な様相を放ち、腰に帯剣している現実味が不均衡な美しさを醸し出していた。

プリームスと親く話している所を見ると知り合いだろう。



バリエンテ達が傍に近付くとプリームスが振り向き言った。

「この2人は私の従者兼護衛だ。付き合いが長くなるかもしれん故、双方名乗っておいた方が良かろう」



すると燃えるような赤い髪の従者が仮面を外して、

「スキエンティアと申します、お見知り置きを」

そうバリエンテ達に軽く頭を下げて告げる。


バリエンテ達はスキエンティアを目にして、初めてプリームスを見た時の様な衝撃を受ける。

プリームス以外に、これ程美しい女性が居るとは思わなかったからだ。



更にもう1人が仮面を外して頭を下げた。

「私はフィエルテです。宜しくお願いします」


そのフィエルテと名乗った人物は、黄金の長い髪を持った麗人である。

プリームスやスキエンティアとはまた雰囲気が違う、息を飲む程の美しい女性。

気品に溢れ、まるでどこかの王族のようであった。



2人の麗人を見てバリエンテは呆然としてしまい、イディオトロピアに肘で小突かれてしまう。

そして我に帰り慌てて名乗る。

「バリエンテだ、こちらこそ宜しく」



「イディオトロピアです」

「私はノイーギアです」

2人は怯む事なくスキエンティアとフィエルテに握手をし、バリエンテは感心した。

『女はやはり肝が据わっているな・・・』



そんなバリエンテを他所にプリームスはスキエンティアへ囁いた。

「よく私の居場所が分かったな」


ニヤリとしてスキエンティアは囁き返す。

「プリームス様の残留魔力を辿ってここまで来たのです」



それを聞いたプリームスは少し思案し再び小声で告げた。

「流石、魔力に対する感度が高いな。ではこの3人、お前はどう見る?」



「学生のようですが、只の一般人と言う訳でも無いようですね。私の見立てでは魔術師と呼ぶに十分な魔力は有しているかと」

とスキエンティアは直ぐに答える。



満足そうな表情を浮かべてプリームスは呟いた。

「ならば問題ない」


そしてバリエンテ達を見据える。

「どこか学園外で魔術を使ったりしても大丈夫な場所はあるかね?」



突然そんな事を訊かれて戸惑うバリエンテ達3人。

だが直ぐに魔術の実力を見る為だと察し、

「良い場所がある。少し歩くが構わないか?」

とバリエンテは逆に尋ねた。



頷くプリームスは、内心で少し嬉しくなってしまう。

それは尋ねた事に対して思った以上に早く返答が来る為だ。


少しの情報の提示で、その全容を計り知る洞察力と想像力。

更に返答や気持ちの切り替えの早さ。

これらは統率者が持つべき重要な資質になる。

それを有しているバリエンテは、プリームスの目へ非常に優秀な人的資源と映った。



バリエンテに案内され後ろを付いて行くプリームスは、誰にも聞こえない程の声で呟く。

「これは本当に面白い事になりそうだ」



誰もその呟きには気付いていなかったが、スキエンティアだけが耳ざとく聞いていた。

『また良からぬ事をお考えのようだ・・・』

そう内心でぼやきつつ仮面を着け直すスキエンティアであった。

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