第8話 囚人の夜明け【短編】

『囚人の夜明け』


(真っ白い世界―――ふわふわする。ちょっと···怖い···。でも···)


 あの“痛み”と“恐怖”から解放され、良かった。


 覚えているのは、男性達の怒号。

 頬を濡らす、自分の血と、他人の血でできた血溜まり。


(···お父さん···)


 ◆ ◆ ◆


「···ぁれ···?」

「レジー!レジー···なのか···!?」

「···ぉ、とぅ···さん···?」


 目を開けば、長い黒髪、長い黒ひげ、浅黒い肌の男がいた。彫りの深い顔立ち。

 一瞬、その手入れされていない髪と髭でわからなかったがーー彼は、自分の父か?


 魔術師、フランキー・ファウストか?


「···ここは···?ぁ···僕は···?」


 フランキーの変わり果てた姿に驚嘆しつつ、周りを見た。

 自分たちがいたのは、とても狭い部屋だ。固いベッドと、水面台、あとトイレが設置されている。窓はーー自分のーー10歳の子供の手が通るくらいの四角い窓があるだけだ。小さな朝日が、床を照らす。


 この狭い部屋に、フランキーと、自分、そして2人の少女がいた。2人は鉄の扉の前に立ち、自分たちの姿を見つめている。


「おはよう、レジー君。私は機械人形屋のリオ。あなたを作った人だよ」

「···き、かい、人形···?作った···?」

「そう、一度あなたは死んだ。私は異世界、2200年のニホンという国からやってきた者なんだ。その世界では、機械人形が作れる。あなたの肉体は今、機械なんだよ」


 リオと名乗った彼女は、正に絶世の美少女だった。腰まで長い黒髪に、黒い目。足首まで隠す黒いドレス姿。

 そして、水面台に映った自分と同じく、首に黒い縦線が2つ並んでいた。


「機械···?一度、僕は死んだ···?」


 信じられない。

 だって、自分の体はーーまさに眠りから覚めたばかりのように、何も変わらない。


「自分の胸を見てごらん」

「えっ?···えっ!?何これ、赤いのがある···!!」

「そう、それが今のあなたの心臓。機械人形のコアだよ。それを壊してしまったら、あなたは死んでしまうから注意して」


 自分の胸が、赤く光っている。こんなの、確かに過去の自分にはなかった。


「あなた自身にも説明しておくよ。2つ目の注意事項として、機械人形は誰かを傷つけたり、殺害することはできない。3つめに、2つ目の約束を遵守しなければ、自ら壊れてしまうという仕組みになっている。よくよく気をつけてね」

「···誰かを、傷つけたり···殺したり?」

 

 ーーあれ?何かを思い出しそうだぞ?

 ···何だっけ?


「···リオさん、私達は早くお暇しましょう?」

「あぁ、そうだねカレン。親子水入らずにしてあげなきゃーーそれでは、私達はまた明日来ますね」


 カレンと呼ばれた少女は、声を潜め、そそくさとリオの背を押す。

 枯れ葉色のセミロングの髪に、翡翠の瞳。地味な顔立ちをしているが、リオとはまた対象的に、野に咲く花のように愛嬌のある顔をしていた。

 扉が開くと、黒い軍服を着た男が立っていた。「この1週間、来客が多いな···伯爵に、2人の女か···」と彼はつぶやいていた。


「···レジー、あのカレンという魔女が、お前の魂をその器に呼んだんだよ···」

「ぇ···お父さん···?」


 頭を掴まれ、自分は彼の腕に抱きしめられた。ーー少し、臭い。

 彼が息を詰め、泣いていた。こんな風にフランキーが泣いたのは、5歳の時に自分の母が亡くなった時以来だろう。


「···魂を呼び出すのは、魔女や魔術師だけだよね?お父さん···」

「あぁ···そう、本来なら魂の器がなければ、呼び出せない···。この世界では、そんな魂の器になるものがなかった···。だが···あの異世界から来た少女は、機械人形とやらを作れる···」

「···待って?何故お父さんが、僕の魂を召喚しなかったの?お父さんならできるでしょ?」


 ーーレジーは彼の涙する顔を見上げる。

 フランキーは、グロブナー伯が治める領地1番の魔術師だ。

 人の病を治すために薬を作り、荒れ果てた地を田畑にするために緑が生い茂るよう魔術を使う。

 人の役に立つ、大魔術師。


「···あれ、レルレルは···?」


 彼が契約している悪魔が側にいない。


「···ちょっとな、お父さん···お休み中なんだ。レルレルも、魔界に帰ってるんだ」


 彼の腕に、ラルクと呼ばれる魔薬が着けられているのをレジーは見逃さなかった。

 

 それは、魔女や魔術師が魔力を封じられる時に使うものだ。家にもあったーー領地で悪さをする魔術師の力を封じるために、フランキーが用意していた。


(···あれ?何だっけ···それ···)


 何かを、自分は忘れている。


「それよりもな、レジー!お前を医者学校に行かせる金ができたんだ!この仕事のおかげで···っ!」

「このお仕事···?これ、お仕事なの···ここ···」

「そう!ここにいて、働いてるんだ···っ!」


 医者になるのが、自分の夢だった。

 しかし魔術師の子供であっても、平民。平民では医者の学校に行けないし、まして家には金もない。

 

(でも、ここって···牢獄か何かのようだよ···)

 

 狭い部屋に、鉄の扉。まるで父の姿も、囚人それだ。囚人や牢獄も、実際レジーは見たことはないけれど。


「でも、僕は行けないよ?平民は、学校になんて···」

「それもこの仕事を終えたら行けるから大丈夫だ!レジー···っ!もうお前に、金のことで迷惑をかけない!」

 

 ーーーぇ?と、レジーは言葉を残す。

 人を助けるためなら、何も厭わなかったフランキーの家には金がなかった。


 この仕事は、そんなにも金になるものなのか?


「···お父さん、僕ってそもそも何で死···?」

「レジー!これからの話をしよう!お前の頭の良さならきっと、たくさんの人を助けられるぞ!ただ注意しなきゃいけないのは、機械人形は人を傷つけられないってことだが、医療行為は大丈夫と聞いておいた!···この仕事が終わったら、王都に引っ越そうな?」


 優しげに笑うフランキーは、また涙を流して自分の黒髪を撫でる。自分の癖のある髪も、そのままだ。


「お父さん···?」

「王都に行ったら楽しいものもある。サーカスや演劇、見るものは沢山あるぞ。···半年前に事故でお前を失ってから、お前を楽しませることだけを考えておいて···」

「事故?でも、僕は何も覚えて···」

「思い出さなくていい。楽しいことだけ考えよう。ーーーな?」


 父の指先が自分を撫でるたび、何故か“悪寒が走った”。


(気のせいだ。お父さんが怖いはず、ない)

 

「···うん、お父さん!でも、今日お仕事はいいの?」

「大丈夫。大丈夫、だ」


 レジーはそれからフランキーと談笑した。フランキーは何度となくレジーを抱きしめ、時折涙した。何故フランキーが泣くのかわからないまま、あっという間に夜が来て、固いベッドの上で2人は抱き合って寝た。


「ごめんな、レジー。こんなベッドで。明日からは、王都の柔らかいベッドで眠れるからな」

「ううん!お仕事だもん!大丈夫!」

「···レジー、愛してるぞ···」


 自分を抱きしめた時、またフランキーは涙した。

 

(不思議。全然眠くならないや)

 

 機械人形になったからだろうか。自分はぱっちりと開いた目で天井を見つめ、父に抱かれて夜を明かした。

 彼に抱きしめられながら、段々とーーー自分の不安は、大きくなっていった。


 ◆ ◆ ◆


「フランキー・ファウスト!時間だ!」


 ぇ、とレジーは目を丸めた。鉄の扉が開かれ、軍服の男たち3人が部屋に入ってくる。厳しい顔つきをした軍人達に、レジーは怯えた。


「大丈夫だ、レジー。これからお父さんはお仕事に行ってくる。だから、いい子にしてるんだぞ」

「お、お父さん···?今日、王都に行くんだよね」

「そう、すぐだ。ーーレジー」


 自分をまた彼は強く抱きしめ、柔らかく微笑んだ。そして立ち上がり、軍服の男達と共に部屋から出ていく。


「ぉ···お父さん!」

「おはよう、レジー。迎えに来たよ」


 フランキーと軍服の男達とはすれ違いに、リオとカレンが部屋の中に入ってきた。

 鉄の扉は開け放たれている。こつこつと父達の足音が遠のいていく。


「レジー君···っ!だ···大丈夫ですか···?無事、ですか···?」

「え?お姉ちゃん···?何を···言ってるの?」

「だ、だって···」


 カレンは自分に駆け寄り、顔を覗いてくる。彼女は言葉を紡ぎ、目を反らした。

 

「殺人犯が自分の息子を蘇らせるとか、本当に奇々怪々だと思っていたけれど、無事なんだねぇ」

「リ、リオさん···!それは···っ」

「お優しい領地の伯爵様に感謝した方が良い。彼はあなたを養子として迎え、金に不自由はさせず、医者にまでさせてくれるという。連続殺人犯の息子には、罪はないからね。安心して?お父さんは今日処刑されるよ」


 優艶な笑みを浮かべるリオと、リオのことを咎めるカレン。

 そんな2人を見て、レジーは目を見開く。


「さつじん···っ?しょけ···そんなこと···」

「あなたを殺したのは、お父さんだよ。お父さんは悪評高い魔術師だったんでしょう?領地の若い女をさらい、人を平気で殺し、それを咎めた伯爵様仕えの魔術師さえ殺した。伯爵はあなたを守ろうとしていただけだというのに」

「―――何を言ってるの?」


 レジーは、リオと対峙した。美貌の彼女を睨み据え、拳を握りしめる。

 

『―――レジー!』


 自分の記憶の中には、優しい優しい父の姿しかない。

 ―――そう、父は誰にでも優しかった。


 だから―――そう、だから―――だから!!




「そんなの、嘘だよっ!だって僕を殺したのは―――伯爵の魔術師なんだからっ!!」




 ◆ ◆ ◆


 レジーは、走った。


「フランキー・ファウストの処刑を執行する!この者、領内の女達を魔術の贄とし、我らが領主様の魔術師と、自らの息子ですら虐待の末に殺した!悪の魔術師の魂は、契約した悪魔に喰われることだろう!」


 広場には人々が集まり、大仰なギロチンが置かれていた。ギロチンにかけられようとしているのはーーー。


「待って!待って!ーーー待ってぇ!」

「な、なんだ!?お前は···っ!!」


 レジーは、処刑台の元に乗り上げた。武装した騎士の1人が、自分の体を抑え込む。

 声を上げたのは、恰幅のいい中年の男だ。

 

「···おじさんが悪いくせにっ!何でお父さんを悪者にするのっ!!」

「おじさん···!?領主の私に対し、不敬だぞ!」

「おじさんが皆を虐めてたから、お父さんがみんなを救おうとしたんだろ!?嘘をつかないでよっ!」


 レジーは大声で叫んだ。集まった民衆達はあからさまに戸惑い、ひそひそと小さな声で囁きあう。


「レジー···!違う···!ーーお父さんが全部やったんだ!お前を殺したのも···このフランキー・ファウストだ!忘れたか!!」

「ぉ···お父さん···っ」


 レジーは身体を跳ねさせた。

 フランキーの鬼気迫った目にレジーは怯える。深い怒りが彼の目からは感じられ、身が竦んだ。

 ーーー父を恐い、と思った。


(···でも、でも···っ!)


「···医者になれなくても、良いのか···?」


 ーーー悪意の呟きを、聞き逃すはずがなかった。


「違うものは、違うよ!僕は、このおじさんの雇った魔術師にさらわれたんだ!」

「レジー!···そんなのお前の妄想話だ!これだから、子供は···っ!」

「―――妄想なんかじゃない!!おじさんの魔術師は、僕をさらって、おじさんは「子供の命が惜しければ、自分のいう通りにしろ」って言ったんだ!」


 自分は――――思い出した。

 

 大きな領主の屋敷の中で、自分は目を覚ました。自分を縛っていたのは魔術師で、自分をいつでも殺せるとでも言うように薄ら笑いを浮かべていた。大柄の男だった。

 

「あの御屋敷には、綺麗なお姉さん達がたくさんいた!全員に催眠をかけろって―――もう自分が治める土地で、じ、じぜん活動?はやめろってお父さんに言ったんだ!でもお父さんは、そんなことはできないって、お姉さん達を帰すべきだって言ったら···っ!」


 レジーは、自分の喉につい触れてしまった。機械人形の証である線が刻まれている。

 

 この首を斬られた時のことが、ありありと思い出される。

 とてつもなく、痛かった。予期しない痛みを与えられ、自身の身体から出てきた血を感じるのに、大変な時間がかかった。



「僕は、おじさんの専属魔術師に殺されたんだ!」



 間違いない。

 だって自分の瞳には、父と領主の姿が映っていた―――遠くにいた彼が、レルレルという悪魔を呼ぶこともなく、自分を殺すことはできない。


「···僕はすぐに死ななかった。だから···わかったんだけど···お父さんは、僕を殺した魔術師を、殺した···。それでおじさんを殺そうとしたけど···おじさんは騎士に守られて···」


 ―――レジーは10歳ながらにも、わかっている。

 人を殺してはいけないこと。

 自分を殺した男を、父が殺した。許されないことだとはわかりながらも、自分は説明しなければならなかった。


 父は―――自分を殺してなどいない!

 レジーのことを慈しみ、レジーのことを想っているフランキーがそんなことをするはずがない。領主の汚名を全て被らされることを、自分は許せなかった。


「―――可哀想に···親子の血に縛られ、殺されても尚、親を守るとは···」

「···違うっ!!おじさんは―――何で嘘をつくのっ!」

「そんなことはしなくて良い···。あんなにも無残に殺されておきながら···」


 グロブナー伯は、騎士を押しのけ、自分を抱きしめた。自分の口を閉ざすように、ぼよんとした腹部に顔を押し付けられる。正直息苦しい。

 ―――男の力強さをもってして、自分の言葉を封じているのだ。


「···そうなの、可哀想な子···」

「ずっと虐待されてたんでしょう?あの子···そう躾されて···」


 広場に集まる皆の声は、レジーの心から血を滲ませた。

 ―――どうして、自分の言葉が通じないのだ。

 

(お父さん···っ!)


 自分は、父を失ってしまうのだろうか。

 ―――辛い、辛すぎる。目の前で愛しい人が殺されてしまうというのは、苦しすぎる。

 父は自分を失った時、こんな痛みを受けていたのか。


「―――それでは私が、噂の各村からさらわれた女性達の魂を蘇らせましょうか?」


 静謐な声音が、響き渡った。処刑台に、カレンが上ってきていた。


「噂の女性達は、生きているかどうかはわからないとされているらしいですね。もし私が蘇らせなければ、まだ生きているということです。女性達が生きていると実証されたら、グロブナー伯の屋敷の捜索を、国王に直々に依頼します!」

「―――ちょっとカレン、無償で機械人形作れってこと?それは···」

「正義が果たされないことを、この魔女のカレンは良しとしません···!綺麗な心の持ち主が、冤罪を被らされることなど···天も地獄も許しはしないでしょう!」


 ―――自信なさげな印象すらあった彼女が、きっぱりと言い切った。リオは不満気な顔で、処刑台を見物している民衆の最前列で腕を組んでいる。


「···医師になど、なれないぞ···平民が···っ···」


 ――――憎々し気に、グロブナーは呟く。彼は流石に顔色を変え、自分にだけ聞こえるようにしていたが―――レジーは、グロブナーの身体を力いっぱい突き飛ばし、フランキーの元に走った。


「医者になんかなれなくても良い!命もなくたって···良かった!お父さんは···生きて!お父さんが生きていない世界にいる意味が――――僕にはない!」

 

 機械人形の目から、涙が零れ落ちた。

 蘇って初めて、自分はフランキーの首に抱き着く。力強く、絶対に離れないように。


 ―――もしも、ここで壊されるのであれば、父と一緒が良い。

 自分の夢を叶えるためにその身を売り、汚名を甘んじて受けようとしている父。


「僕は、お父さんが皆を救っている姿を見て、医者になりたいと思ったんだ!お父さんを殺してまで、僕は夢を叶えたいなんて思わない!そんな夢なら、捨てる!お父さんを殺すなら、僕も一緒に壊してっ!!」

「―――レジー···っ!やめてくれ···っ!お前の夢は···っ」

「お父さんが生きてなきゃ、嫌だっ!僕は···お父さんと―――生きたいんだよ···っ!」


 確かに父は、1人の人間を殺している。

 もしかしたら、ここで処刑されてしまうかもしれないという恐怖がレジーの頭を占める。

 

 母を亡くし、たった1人で自分を育ててくれた彼。

 領地の皆を救うことに苦心していた父。

 さらわれてきた娘に催眠をかけることを、抵抗したフランキー。


 彼が大好きだから、死んでほしくない。


「―――一旦、処刑を止めよ」

「···大佐!ですが···!」

「私にも、彼と同じ年頃の娘がいる。機械人形屋は、国王陛下も認めるところ。無下にはできない。···改めて、捜査せよ」


 大佐と呼ばれた50代半ばの初老の男性が、じろりと自分たちを見る。カレンが遠くから頭を下げた。


「す―――直ぐにフランキーさんを解放して下さい!こ、国王に言いつけますよ!」

「お姉ちゃん···」

「だ、大丈夫ですよ!?―――お2人の親子の絆を、無下になんかさせません!魔女の名に誓って!」


 魔女のカレンに言われ、騎士達は戸惑いながらもフランキーを処刑台から下がらせる。自分は絶対に父から離れず、涙を流しながら、しがみついた。


 もう二度と、父と離れたくなかった。


「お父さん···っ!やだよっ!やだっ!僕のせいで、お父さんが死ぬの何なんて、やだから!」

「レジー···お前の夢を叶えたかった。私が死ねば、お前の夢は叶う。だから、伯爵と取引をして、私は汚名を被ろうと思った。あのまま私が死ねば、お前の夢は――――」

「やめてよっ!!」


 レジーは、叫んだ。

  

「お父さんが処刑されたら、僕は壊れる!だから···もう変なことをしないで!僕のそばに、ずっといてよ···っ!!」


 医者になる夢など、どうだって良いと自分は思った。

 彼と生きることこそ、自分の幸福なのだ。

 父の命と引き換えに得られる夢など、捨ててやる。

 この温かな身体に抱かれ、永遠に生きていきたい。


「···私は···」

「―――お父さん、僕を、蘇らせてくれてありがとう···」


 もしも自分が蘇らなければ、彼は死んでいた。

 むざむざと、残酷に。こうして彼が生きてくれたのならば、自分は機械人形でも蘇った価値がある。

 自分の命を投げ打っても構わない存在を、助けることができたのだ。


「···お父さん」

「···レジー···っ!」


 強く、強く、彼の身体を抱きしめる。

 互いに自分達は、互いを求めあっている。どちらかの命が奪われるのなら、自分はこの世から消えて良いという意思を互いに持っていた。



 闇よりも深く結びついた2人の絆は、永遠である。



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