第2話 休業手当の基本のキ

 最初は、今まさに旬の『休業手当』から紐解いていきましょう。

 専門用語が多いので、必然的に漢字が多くて読みにくいですが、ご容赦ください。



 まず、トピックとして取り上げたいのは。

 今回、コロナ休業したにも関わらず休業手当が支払われていない人の為に『新型コロナウィルス感染症対応休業支援金』(通称:休業支援金)なるものが、新しく制定されましたね。

「会社の指示で休業したのに、まだ休業手当が支払われてないよ…… 」という方は、早速、厚生労働省のホームページへGOです。

 労働者が直接申請出来るので、なかなか良い制度ではないかと思います。


 

 それでは、本題に入りましょう。

『休業手当』については、労働基準法の第26条に定められています。


◇ ◇ ◇

 第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

◇ ◇ ◇


 法律なのでしょうがないですが、堅いですね。

 いったい何を言ってるかというと、「会社の都合で社員を休ませた時には、平均賃金の60%以上支払わないとダメだよ」って事です。

 

「それじゃあ、私の場合は日給5,000円だから、休業手当は3,000円って事ね!」と思ったそこのアナタ。

 残念。

 間違いです。


 ここでポイントになるのは「平均賃金」です。

「賃金」の6割では無いのが注意点。

 感覚としては、すごく少なくなっちゃうんですよね…… 。

 そして、ここでいう「賃金」には、通勤手当や残業手当も入ります。


 では、「賃金」とは一体ナニなのかって話になる訳ですが。

 基本的には毎月支払われる手当は「賃金」に含まれます。

 ただし、恩恵的なものや、実費弁償的なものは含まれませんので、ご注意を。

 具体的には、決算手当や出張旅費などは含まれません。

「賃金」については、とても奥が深いので、また別の章で触れたいと思います。



 では、話を戻しまして「休業手当」の計算を実際にやってみましょう。

 まず、休業手当は平均賃金の60%以上ですから、平均賃金を算出する必要がありますね。

「平均賃金」とは、2つの計算の仕方があって高い方を採用します。

① 3ヵ月分の給与総額÷3ヵ月分の暦日数

② 3ヵ月分の給与総額÷3ヵ月分の実働日数×60%


 例えば、4月に休業があったとします。

 この場合、休業の前の3ヵ月(3月、2月、1月)を基礎として計算するのが一般的。

 分かり易いように、賃金の締め日と支払い日を、月末〆の翌月25日払いとしましょう。


【例:月給の場合】

 基本給20万円

 通勤手当1万円

 家族手当2万円

住宅手当1万円

 1月分には、残業手当が8,000円


『平気賃金』=(24万+24万+24万8千円)÷(31日+29日+31日)=8,000


 休業手当は平均賃金の6割以上ですから、

『休業手当』=8,000×60%=4,800


 1日当たりの休業手当は、4,800円となる訳です。

 もし、4月が全休で、勤務する予定だった日数が、21日間だったとすると。


 4,800円×21日=100,800円


 すごく少なく感じませんか?

 半分以下になっちゃいます。

 企業によっては、「ウチは、休業手当を100%だすよ」っていう場合もありますが、それでも


 8,000円×21日=168,000円


 100%でも、普段のお給料より随分少なくなってしまうのです。

 100%って聞くと、普段のお給料と同じだけ貰えると勘違いしてしまいますよね。

 更に、ここから税金などが引かれますから、注意が必要です。


 【例:日給の場合】

 1日5時間勤務で、月に15日間の勤務とします。

 日給5,000円(5時間勤務)×15日

 交通費7,000円(350円/日)

 資格手当3,000円(150円/日)

 リーダー手当5,000円(250円/日)

 合計90,000円/月(総支給額)


 月給以外は、①と②の計算式で算出して、高い方になります。


① (90,000円×3ヵ月)÷(31+29+31)=2967.03円

②(90,000円×3ヵ月)÷(15×3)×60%

=3,600円


 結果、平均賃金は、3,600円となります。

 休業手当は、この金額の60%ですから、一日当たりの金額は、2,160円となる訳です。


 同じように、4月が全休で、勤務予定日が15日だったとすると、4月分の休業手当は。

 60%の場合は、

2,160円×15日=32,400円

 100%の場合でも、

3,600円×15日=54,000円



 という訳で、とっても少なくなってしまうので、計算する時に、基本給以外の手当もキチンと算入してくれているかは、とても大切になります。

 一日当たりの差額は少ないかもですが、何日も休業した場合には大きな差になりますよね。

 チリも積もればなんとやら、です。

 

 ネットには色々な情報が溢れているので、分からない事を調べるにはとても便利では有りますが、微妙に間違ってる情報も多いですよね。

 労働法関連については厚生労働省のホームページをお勧めします。

 休業手当の計算方法も、掲載されてます。


 そして、休業手当を支払ってリストラを行わなかった会社に対する助成金の制度があるのです。

「雇用調整助成金」という制度ですね。

 地下鉄で話してた2人は、この事を大声で話していた訳ですが。

 国に対して申請するものなので、要件を満たしていて必要書類が揃っていれば支給されます。

「申請しても、出るか出ないか運次第」なんて事はないのです。


 休業手当の基本のキ。

 知っておいても損は無い豆知識でした。

 

「コロナ離職でお家賃が払えないくて困った!」

 次回は、そんな時のお助け制度を紹介します。

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