か、可愛い……

 泉に着き私たちは木陰で休憩しているとナミが話しかけてきた。


「駄主人様ー、いつまでここにいる気かニャー?」

「うーん、領主様がこんなんだからなー。 とりあえず目覚めるまで待とうかな」

「暇ニャー」


 そう言いながらナミは泉の岸にいる魚を目で追っている。

 私は領主様の方を見るがいまだに気絶したまま目覚める気配がない。


 私も暇だし水の能力の応用方法でも考えていようかな。




「んん…… ここは……?」

「あ、起きた」


 ざっと二時間近く経ちようやく領主様は目を覚ました。 でも様子がおかしく寝ぼけているようだった。


 寝起きだけどやっぱり可愛いんだよなあ。


「あれ? ルースはどこだ」

「領主様ー、ここは屋敷ではございませんよー」

「はっ! 私は今なんと!?」


 ん? 私? ってことはやっぱり……


「領主様、お尋ねしますがもしかしてあなたは女の人なのでは……」

「ああ、そうだぞ」

「え、意外とすんなり言うんですね」

「まあ、そなたたちなら感づいていただろうし言ったところで害はないだろう?」

「まあそうですけど……」


 その後、領主様はすらすらと国のことや自分自身のことについて語ってくれた。

 国は元帝国の領土で代々男の王を置くことで土地を治めて来たらしい。 しかし今の領主様は女で帝国はそれについて怪しんでいる、ということだった。




「じゃあこの泉に来ていたのはなんでなんです?」

「ここは私の双子の兄とよく来ていた場所なのだ。 そして私が女を捨てた場所でもあるのだ」

「と言うと?」


 領主様は少し顔を歪めながら語った。

 私は一瞬そのことについて踏み込んでいいか迷ったが聞くことにした。


「ここで遊んでいたときに私が溺れてそれを助けに来た兄、ルースが死んだのだ」

「そうだったんですね…… お悔やみ申し上げます」

「構わん。 そう固くなるな」


 下を向いて涙を抑えながら領主様は言う。

 しかし顔を横に振り笑顔で言う。


「そなたたちと会ったのも何かの縁だ。 私の本当の名前を教えよう」

「え!? いいんですか!?」


 隠しているとはいえこんな見ず知らずのお尋ね者に教えてもいいの!?


「いいのだ。 私の本当の名はマーシャ・ノズ・アルフレッドと言う」

「マーシャ……」


 思わず口ずさんでしまった。


「おお、本当の名で呼ばれるのも悪くはないな。 これからはマーシャと呼んでくれ」


 領主様ことマーシャは嬉しそうに言う。


 マーシャか。 見た目に似て可愛らしい名前だなぁ。


「うん、マーシャ。 これからはそう呼びますね」

「あと敬語もやめてくれないか? そなたたち、いや海凪とナミには友のように接してもらいたい」

「わかったニャー」


 ナミは泉を眺めながら返事をする。


 ナミ、いたんだね……

 さっきから姿が見えないと思っていたけどまだ魚を眺めているとは……


「海凪はいいか?」

「もちろん。 よろしくねマーシャ」

「うん!」


 よほど嬉しかったのかマーシャははにかんで言った。


 !!

 何今の……? 凄い可愛かったんだけど……

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