もしかして……

 私たちは屋敷の裏口すぐにある小さい林に来ている。


「ナミ、跳べる?」

「行けるニャよ」

「むむ、跳ぶとは?」


 屋敷の外に出たはいいもののこの国から出るには屋敷の場所が悪すぎた。 そこで私はナミの能力に目を付けた。


 ナミの特技スキルを使えば簡単にここから辺境あたりまで跳べるんじゃないかな、と思ったんだけど……


「ナミの特技スキルだけじゃ三人は難しいかな」

「うーん、やってみないとわかんないニャね」

「だから何の話をしておるのだ!?」


 領主様にもわかりやすく説明しなきゃね。


「ナミの特技スキルは脚力アップっぽいのでそれを使えばこの国の外れまで跳べるんじゃないかと」

「この国の外れだと!? 距離がどれだけあるかわかっているのか!?」

「だからやってみるんですよ」


 私は全員に水の膜を張った。


 跳ぶときに起きる空気抵抗で体ごと持っていかれかねないからね。 その点水は抵抗が増えれば増えるほど固くなるから防御にぴったりだなあ。


「なんだこれは! 息が…… できるぞ」

「あ、いい忘れていましたね。 これが水の羽衣です。 少し応用してありますけどね」

「なるほど、これが…… って僕は下に服を着ているんだが!?」

「あ……」


 体に合わせて動くとは言え密着しているわけだから…… まあいっか。


「ナミ行ける?」

「あいニャ! 行くニャよ!」

「え、ちょ、まだ心の準備が……」


 次の瞬間ナミは私と領主様を掴んだまま跳んだ。 一瞬にして屋敷が豆のように見える。


「私たち落ちすぎじゃない?」

「そうニャね。 ほんとは嫌ニャけど水にも慣れてきたニャ」

「きゃああああああああああ!」


 領主様は女の人顔負けの高い声で叫んでいる。


 あれ? 普通男の人ってこんなに高い声でるっけ?


「あ、気絶してるニャ」

「別に風圧とかは全部カットしてるんだけどね」


 領主様は高いところが苦手なのか、それとも初めて来たからなのかぐったりと気絶していた。


「駄主人様、もうそろそろお願いニャー」

「りょーかーい」


 私は祈る。


『水よ、私たちを包み込まん』


 いつもの通り私たちの周りに球状のバリアが貼られた。


 ボヨヨーン、と間抜けな弾み方をして着地する。 どうやら最初の泉に戻ってきたようだった。


「どうする? これ」

「そうニャね。 空から見てた感じだと町からは遠いからしばらく追ってはこなさそうニャね」

「なら休憩でもしてこかな。 いきなり色々なことが起きたから少し疲れたし」


 あ、でも濡れた服着せたまま放置っていうのもかわいそうだよね。 着替えさせてあげようかな。


 そう思い、いかにも貴族っぽいシャツのようなもののボタンをはずした。


「えっ!?」


 領主様はシャツの下にコルセットを着ていた。 しかもかなりキツめのを着ている。


 もしかして…… 領主様って女の人なんじゃ……

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