脱出!

「さて、行きますか」

「あいニャー」


 私たちは地下へと続く階段を降り始める。 言われた通り鍵付きの扉があった。


 『水よ、錠口を開けたまえ』


 指の先から水を生成し鍵穴に満ちさせ鍵の形で固定し扉を開ける。


 やっぱりできた! これなら捕まっても脱出は簡単にできるなあ。


「待ってましたよ! よく……って誰だお前らは!」


 早速看守の兵士に出会ってしまった。

 口調的にレイおじい様とグルなのかな。


 邪魔だしいいかな。


 私は祈り始める。


『水よ、満たし』

「駄主人様、ちょっと待つニャ。 ここは私が行くニャよ」

「わかったわ」


 私はすぐに道の端に避けナミに道を開ける。 それと同時に残像となったナミが私の横を通り過ぎた。


「ぐっ! う……」

「いっちょ上がりニャ」

「え…… なに今の……?」


 私は一瞬のことに頭が追い付かないでいた。


 ナミの能力は確か黒豹ブラックパンサーだったはず……

 でも今のはいくらなんでも速すぎない……?


「ニャニャ! こんなに速くなっているとは思ってなかったニャ……」

「え! ナミも知らなかったの?」

「凄きを早くする特技スキルがあるらしくて使ってみたらこんなに速くになったって感じニャね」

特技スキル!?」

「あ、魔王城で見つけた本に書いてあったニャ」


 確か魔王城で客間に待たされた時に隣に本棚があったっけ。


「知ってるならもっと早く言いなさいよ!」

「ニャニャ!? 逆ギレかニャ!?」


「そこに誰かおるのか!」


 突然声が聞こえて瞬時に警戒する。

 声の主は……


「領主様!? ご無事ですか!」

「なんだそなたたちか。 僕のことを笑いに来たのか?」

「あ、いえ。 レイおじい様とやらを殺してしまったので領主様に話を聞こうと」

「何!? まさかおぬしら最初からそれを……」

「いえいえ! 殺されかけたので正当防衛です!」


 変な疑いをかけられそうになったので私たちは必死に誤解を解いた。


「なるほど…… まさかあのクソジジイがそんなことを……」

「く、クソジジイ?」

「ああ、そうか。 あいにくここには誰もいないからな。 このしゃべり方なのは許してくれ」

「は、はい……」


 こういうところを見るとやっぱり男の人なんだなあ、と思う。

 でもなぜか可憐さが隠しきれていないというか……


「それで本当に領主様は私たちのことを殺そうとは思ってないんですね?」

「それで僕に何の得があるというのだ? それに僕はそんな裏の仕事はしたことがないぞ」

「わかりました。 信じますね」


 私は地下への扉でやった通りに鍵を開けた。


「な、なんと…… こんなこともできるのか……」

「便利ですよねー」

「そうニャねー」


 さて、領主様を牢から出したことだしこれからどうするかな。

 そういえばレイおじい様とやらを倒しても死神の声は聞こえなかったし世界を救ったことにはなっていないらしい。


「あのクソジジイのことだから僕が二人を殺そうとしたことは世に広がっているだろうな…… しょうがない、国外に逃げるしかないか」

「あ、私たちもついて行っていいですか?」

「む、いいのか? 僕にとってはありがたい話なのだが」

「私たちもここのことについて詳しくないですし案内していただけるとありがたいです」


 そういうことで無事脱出することができた。

 しかし、まだ魔の手が迫っていることに私は気づいていなかった。


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