な、何!?

「それでその服は一体なんなのだ?」


 領主様は外にいた時よりも動きやすそうな恰好をしている。 来ている服は男物なのにどこかか弱い少女のような雰囲気もある。


 うーん。 やっぱり勘違いなのかなぁ。


「この服は着ているというかまとわりついている感じの服でこれも水の力です」

「私たち猫からすると着心地は最悪なんだけどニャ」

「そ、そうか……」


 珍しくナミが人に対してなついている。 人見知りが激しくて私にしかなついていなかったのにどうしてだろう。


「それでさっき言っていた呪いとは何なのだ? 僕からはそんなこと命令した覚えはないぞ」

「それは本当の、」

「駄主人様、この人は信用できるニャよ」

「ナミがそう言うなら……」


 私はまだこの領主様を信用できていない。 敵国のスパイと思っていていつ殺しに来てもおかしくない状況だから警戒するのも無理はないでしょ。


「信用してくれるなら良かった。 それで呪いはどの程度の強さなのだ?」

「見た感じ人一人はコロッと逝きそうニャね」

「なんと! 急いでメイドたちの中から犯人を捜さなくては!」


 そう言うとすぐに領主様は大広間にメイドを集めるようにさっきの採寸をしてくれた三人組に言う。


「「「わかりました! 大至急集めさせますね!」」」

「うむ。 各持ち場ごとに並ばせよ」

「「「はい!」」」


 結構な大事だしメイドたちや領主様の焦り具合が半端じゃない。


 とりあえず私たちは周りの警戒でもしていようかな。 


 *


「皆の者よく聞け! この中に客人を殺そうとした裏切り者がおる。 速やかに名乗りでよ、私が殺してやる。 光栄に思え!」


 するとメイドたちの間がざわざわし始めた。


 そりゃあそうなのかもね。 だって仲間の中に裏切り者がいて今から殺されることになるんだし。


「速やかに名乗り出ない場合、怪しいものは片っ端から斬首台行きだぞ!」

「いくらなんでもそれは……」

「かまわんのだよ。 平和を掲げている国に裏切り者は必要ない、ただそれだけのことだ」

「はい……」


 私はおとなしく食い下がった。


 確かに平和な以上大きな事件を起こされては収拾がつかないし領主様が狙われることもあるんだもんね。


「斬首台行か……。 それは自分に対する言葉なんじゃないのかな?」


 後ろから声がして振り返ってみるとそこには白髪で無精ひげが生えている初老の男の人が立っていた。 恰好の豪華さからして大臣あたりだろう。


「レイおじい様……。 どういうことですか?」

「簡単なことじゃよ。 そなたが客人の服に呪いを込め、と言うことじゃよ」

「なっ……! 僕がそんなことをするはずが」

「それがあるんじゃよ」


 レイおじい様とやらは自信満々そうに言う。


「そなたは客人がたを殺そうとした動機があるじゃろうが」

「僕にはこの方々を殺す動機なんてないです! いい加減にしてくださいレイおじい様!」

「いい加減はそっちじゃよ。 いくらを知られた可能性があっても客を殺すのはまずいじゃろうが」

「……!」


 レイおじい様が秘密と言ったとたん領主様は俯いて黙ってしまった。


「決まりじゃな。 先代に面目が立たぬが斬首で許しをもらうといい、レオンよ」

「最後に一つだけ言わせてください」

「なんじゃ? わしもそれくらいは聞いてやらなくもない」


 するとレイおじい様は顔を赤らめた。


「早くこの愚か者を地下牢にぶち込め! 鍵は三重で飯は一日一回でいい!」


 メイドたちは混乱していたがそれに従って領主様を連れて行ってしまった。

 私たちはポカンとしながら見ることしかできなかった。

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