の、呪い!?
「「おかえりなさいませ。 領主様、それにお客人様」」
「うむ。 出迎えご苦労」
城の門に二人のメイドが立っており門を開けながら迎え入れてくれた。
門にいるのがメイドとデュラハンでは全然違うなあ……
それに少しだけ見える庭もきちんと管理されていてきれいだなあ。
そう思いながら馬車の窓を覗いていたらナミが目配せをしてきたので私は視線を合わせる。
(駄主人様! 気を付けるニャ!)
(気を付けるって何から!?)
(分からないけどこの家からは何か嫌な臭いがするニャ……)
私は考える。
ナミが言う嫌な臭いとはもしかして領主様の言っていたレイおじい様とやらに関係があるんじゃないのかなあ?
財政関係を受け持っているみたいだし、なにか良くないことをしているかもしれない。
(わかった。 ナミも異常に良くしてくれる人には気を付けてね)
(あいニャ)
「どうしたのだ? お二人ともじっと見つめて」
「あ、いえ。 お気になさらず」
「ニャー」
領主様は不思議そうに首をかしげている。
その姿も綺麗でまるで女性の様だった。
この人って本当に男の人なのかな。 時折見せる笑顔やしぐさがとても可愛く見えるんだけどなあ。
「さて、我が屋敷に着いたことだし僕が直々に案内しようではないか」
「ありがとうございます」
「あざますニャ」
「よいよい、素直に感謝を言えることは素晴らしいな」
領主様は笑顔でそう答える。
やっぱりいい育ちをしてるなと実感する。 装いだけでなく中身まで清い人なんだなあ。
*
屋敷の中、と言うより城に近いが中に案内され客間に通された。
ここまでの流れは魔王城の時と同じだ。 違うところと言えば内装の温かさだろう。 魔王城と違い装飾が光っておらず暖色の壁紙が貼っており落ち着く雰囲気だ。
「僕は着替えてくるので少し待っておられよ。 そなたたちの着替えも改めて用意させる」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
「それでも客を汚れた格好で歓迎する王はいないだろう。 これくらいはさせてくれまいか?」
「そこまで言うのならありがたく頂戴しますね」
「うむ」
そう言うと領主様は廊下に出て行った。 それから数秒後に三人ほどメイドが入ってきて各サイズの採寸をしてくれた。
数値にしてみるとやっぱりナミはスタイルがいいなあ。 それに比べて私は……
客間で待って三十分がたった頃。
コンコン
「はーい」
「失礼します。 お二人のお召し物が出来上がりましたのでお納めください」
「それは絶対に着ないニャ」
「「え?」」
メイドの人と私は驚いた。
「その服の素材はなんなのかニャ?」
「上質なシルクでございますが……」
「じゃあ、染料はどうかニャ?」
「各地方から取り寄せている花の染料でございます」
「ふーんニャ。 まあ私たちは着ないですけどニャ」
私はここでナミと目を合わせる。
(貰わないってどういうこと?)
(あの服には一種の呪いみたいなものがかかっているニャ)
(え!? そんなことわかるの!?)
(完璧には分からないニャよ。 でもなんとなくでわかるのニャ)
なんとなくでもそんなことまでわかるんだ……
飼い猫だったけど野生の勘ってやつなのかな……?
(じゃあ、着替えとして羽衣でいい?)
(呪いよりはましニャね)
私は祈る。
『水よ、我らを覆い守り給わん』
すると空中から水が現れ、波打つ水のドレスが完成した。 今まで来ていた服は濡れないように一気に水を蒸発させ風を起こして脱ぐことができた。
これで実質風も操れるということになる。
「おお…… 水だけでなく風までも…… これは大魔法師並ではないか……」
開けっ放しの扉から領主様が驚いた顔をして立っている。
「えっと、これは水の力の応用ですよ」
「なんと! そんなこともできるのか!? 便利なのだな!」
「ええ、まあ」
そんなやり取りを廊下からにやけながら聞いている者がいることに私はまだ気づいてはいなかった。
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