ねえナミ

「うわあああ! って二回目なんだよなあ」

「そうニャね。 また頼むニャ」


 いきなり体が浮遊感に襲われるのは慣れないけど二回目となれば対処法も分かっている。

 私は落ち着いてナミと私の体を覆う球状の水、水防球ウォーターボールを張る。


「うう、気持ち悪いニャ……」

「もう少しだから我慢してね」


 そう言いながら下を見る。

 今度は森ではなく湖の上のようだ。


 バッシャーン


 そのまま湖に落下した。

 数秒して二つの水の球が浮いてきた。


「ふう、流石に安全とわかっていても落ちる瞬間は怖いわね……」

「まったくニャ…… それより早く岸まで行かないかニャ?」


 ナミが怯えながら言う。


 そっか、水の中なんてナミにとっては地獄も同然なんだもんね。

 じゃあ、こんなことでもしてみようかな。


「水よ、波となれ」


 言った瞬間、湖の水が一気に五メートル近くの波となり私たちの水防球ウォーターボールを岸まで押し流した。


 神様に無限の魔力をもらったからか大波を起こしてもまったく疲労感がない。 これなら常に能力が使えるわね。


「あんな波を一瞬で……」

「だ、誰!?」


 岸に着いたと思ったら近くの草むらから声が聞こえ私とナミは戦闘態勢に入る。


「待って! 僕は敵じゃない!」


 草むらから出てきたのは若く身なりのいいとても綺麗な人だった。


 すごい綺麗なのに服装からして男の人みたい。 それにしても…… あっ!


 私はとんでもないことに気が付いた。


「ナミ! ちょっとこっち来て!」

「え、えーと。 僕は……」

「そこにいて! 絶対にこっちに来るんじゃないわよ!」


 私とナミは転生直後でだったのだ。


 まずい…… ただでさえ猫耳のついたこんな姿なのに水の羽衣まで着ていたらびっくりしちゃうよね……


「もし、服がないのか? 貸してやろうか?」

「え、いいんですか?」

「その…… 赤裸を見てしまったものだから……」

「あ……」


 恥ずかしくて穴があったら入りたい。 そう思ったけどもしかしたらこの人が女の人かもしれない、と自分に言い聞かせて忘れることにしよう。


「じゃ、じゃあお願いします」

「わかりました」


 するとさっきのきれいな人は手を二回たたいてこう言った。


「この者たちに衣服を! 異種の方の様なので調整は任せる」


 言い終わるや否や召使いのような人たちが数人現れて瞬く間に着替えさせてくれた。

 しっかりと尻尾の場所にもピッタリの穴を開けてくれた。


「ありがとうございます。 それであなたは……」

「ん? 僕か? 僕はレオン・ノズ・アルフレッドだ」

「レオンさんですか。 あなたはその、貴族か何かで……」

「そうだな。 この国、すなわちノズ公国の領主だ」

「……え!?」


 私はびっくりしすぎてフリーズしかけた。


 この人が領主!? ってことはいきなり私の魔法を国のトップに見られたってこと!? これって結構まずいんじゃないの……


「そ、その…… 服はありがたいんですがこの後に私たちを捕まえる、みたいなことは……」

「まさか! そんなことするわけないであろう! 我が国は平和と和睦を第一に置いている国だぞ! 異種の方とは言え捕まえることはしないぞ」

「それは良かったです……」

「しかしあなたたちは猫人族ケット・シーのようですが水の魔法を使えるのですね…… 興味深い……」


 領主様は顎に手を当て何かを考え始めた。


(ねえナミ!)

(何かニャー?)

(これからどうしよう!)

(別に悪い人じゃなさそうニャしなるようになるニャー)

(そう言われても……)


「よし。 少しお時間をいただいていいかな? 純粋にそなたたちについて知りたくなった。 是非とも屋敷に招待しよう」


 爽やかな笑顔で領主は言った。


 え、またこんな展開なの!?


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