え、まだあるの!?
『お疲れ様ー! 死んでまで来たかった異世界はどうだったのかしら?』
頭の中であの忌々しい死神の声が聞こえる。
どうもこうもいきなりすぎてなんとも言えないよ……
「早く元の姿に戻してニャ」
「あ、それ私も」
猫耳や尻尾は可愛いくて好きなんだけど邪魔だし正直役に立っているとは思えないんだよなぁ。
だから私としてはとりあえず人に戻してほしい。
『初めての異世界なのに感想がそれとは……』
まあ、驚くよね。 魔王を倒して一言目が元に戻してほしいなんて普通じゃありえないもんね。
『別に二人とも戻してあげていいんだけど…… その場合ほんのちょっとだけ問題があるのよねー』
「ほんのちょっとって何が問題なのよ? 別に元に戻るだけじゃない」
『そうなのよ…… だから姿を戻すと
え? つまり私は水を操る力を失うってこと?
「まあいいや。 どうせ現実世界には必要ないんだし」
「そうニャね。 むしろこの姿のほうが怪しまれるニャ」
これでまた新しい人生を歩めるんだからこんな力はもういらないよね。
『え、二人とも何を言っているの? この世界はまだ
「……は?」
「ニャに……」
今なんて言った? まだ
「ねえ、死神さん」
『なあに?』
とぼけたように死神は返事をする。
「もしかしてまだ世界を救えとか言わないよね?」
『……』
「あの……」
問いかけても返事がない。
「お返事を……」
『……』
まだ、返事が返ってこない。
「おい」
『すいません。 まだ山のように残ってます』
まだ山のように? いい加減ふざけないでほしい。 私たちはあっさりとは言え一つの世界を救ったんだから早く現実で生まれ変わらせてよ。
『実は…… 神様から仕事のために勝手に人間を殺したことがばれて仕事を倍にされたのよ……』
「で?」
『その…… 手伝っていただけると……』
「はあ? 嫌に決まっているでしょ?」
いらだちが隠せず言葉に出てしまう。
なんで死神に任せられた仕事を私たちがやらなきゃいけないの?
『後生だから頼むわよ…… わかった! 能力について解説と強化をしてあげるから!』
「もう聞くのも無駄ね……」
「そうニャね」
わかったわよ。 折れてあげるからさっさとしなさい……
『あ、ありがとう! じゃあ痛いだろうけど我慢してね!』
「え、ちょっ」
言い終わる前にまた胸付近が痛んできた。 私とナミは二人とも胸を押さえながら大理石の床に倒れてしまった。
*
「いたた……」
「なんだったのかニャ……」
目を開けると以前にも見たことがある真っ白な世界が広がってた。
またここか…… ってことは。
「あなたたちならきっとやってくれると信じていたわ! 本当にありがとう!」
「別に次の人生のためだから嫌々でもやるわよ」
「あ、うん…… じゃあ説明するわね……」
そういえばナミの能力はまだちゃんとはわかってないんだよね。 たぶん
「海凪さんの考えていることは半分正しいわ」
急に真面目な顔になった死神が話し始める。 それを感じ取った私たちは息を飲み耳を澄ませる。
「ナミさんの能力は
「
私は記憶をさかのぼる。
黒豹って確か密林に住む夜の王で死角から一撃で獲物をしとめるんだっけ。
そう考えるとナミに合っている能力かもしれない。 気配を消すのが得意で相手を一撃で仕留めるくらいならできるだろう。 現に執事風の男性をいつの間にか気絶させていたんだし。
「ナミの能力はわかったけど私のはなんなの?」
「もう、急かさなくてもちゃんと教えるわよ」
私の能力はただ水を操るだけなんだろうか? それともさらに可能性がある能力なのか……
「海凪さんの能力は……」
「ちょっと待ったー!」
死神が言いかけると突然さっき倒したはずの金髪の魔王が現れた。
「え!?」
「ニャニャ!?」
「あ、驚いているところすみませんね。 自分は神をやらせてもらっている者です!」
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