た、倒しちゃった……
「お待たせいたしました。 主人がお待ちですので玉座の間へご案内します」
服を着替えたのか執事風の男性は白が基調のタキシードを着ている。 また、髪形もオールバックから髪を前に流して自然体みたいだ。
そうして見てみると思っていたより顔立ちが整っている。 まあ、興味ないけど。
「わかりました。 でも、その主人さんは一体どんな方なんですか?」
「ああ、言い忘れていましたね。 我が主人はここの地方を支配していて人間を完全に絶滅させた素敵な方なんですよ! それに私などの部下への配慮も忘れない人格者です!」
主人のことを聞かれて嬉しいのか興奮気味で教えてくれる。
「え、えーと。 そうなんですね」
思ったよりちゃんと魔王をしていて驚いたけど、人間を絶滅させてるくらいだから倒してもいいよね。
(これってほんとに殺しちゃっていいのかな?)
(まあ、魔王ニャからね。 いいんじゃないかニャ?)
(うん、ならちゃちゃっと殺っちゃおう)
(ニャー)
遂に相槌が鳴き声になったナミは放っておいて私は廊下の装飾を眺めてみる。 赤色のカーペットが敷き詰められていて壁はどこも金色に光っていて花瓶すら金に光っている。
どうせ倒しちゃうなら何か一つくらいもらっちゃってもいいんじゃないかな? まあ、私のちっぽけな良心があるからやらないんだけどね。 そんなことを考えながら歩いていると大きな金の扉が見えてきた。
「こちらが主人のいる部屋でございます」
「し、失礼します」
「ニャ」
私の身長の二倍くらいありそうな扉がギギギと音を立てながらゆっくりと開かれていく。
私の身長が百六十センチくらいだから三メートル少しくらいかな。
そしてその金の扉の先には……
「魔王様、お連れいたしました」
「おう、サンキューな。 そんでお前らは一体何者なんだ?」
髪は金髪、手には金の指輪、金のブレスレットをジャラジャラと着けている二十代前半の見た目をした男の人が玉座らしき椅子に座っている。
唯一人間と違うところと言えば頭の側面から短い角が生えているくらいかな。 ただ話し方もそうだけどめちゃくちゃチャラそう。 私はこういう人種が一番苦手なんだよなあ。
(ねえ、もう殺っちゃっていい?)
(いいニャよ、話を聞いていても得ることはなさそうニャし)
(わかったわ、私は魔王を相手するからナミは執事の方をお願い。 少し時間を稼ぐだけでいいから)
(あいニャー)
私たちは同じタイミングで魔王へ顔を向けた。
そして息を合わせて……
「私たちは!」
「あニャたを殺しに来たんニャよ!」
「なにっ!?」
一秒ほど間があり魔王がそう言うと同時に私は魔王を倒すべく祈り始める。
『水よ、悪しき魔王を包み込みたまえ』
祈り終えると同時に空気中から水が現れ、魔王の頭を包み始める。 魔王も油断していたのか避ける間もなく水に飲まれていく。
「み、水を使う
魔王は叫んでいる間に頭を覆われ出ようともがくが水は離れようとはしない。 すると一、二分ほどで魔王は白目をむいて動かなくなった。
おそらく私が解除をしない限り永久にこのままだろう。 やっぱりこの能力は応用がきいて便利だなぁ。 あ! そういえばナミは!?
「ナミ! 大丈夫!?」
魔王に集中しすぎて気にしていなかったけど、こっちに邪魔が入ってこなかったから時間を稼いでくれたのかな。 そう考えるとナミはどんな能力を使ったのだろう。 人型化したこと以外知らないし話そうともしないんだもんなぁ。
「ニャー? ああ、こっちなら大丈夫ニャよー」
ナミは部屋の端っこにチョコンと体操座りをしている。 その近くにはうつ伏せに倒れている執事の姿があった。
ナミはこの短時間に一体何をしたんだろう……
「な、ナミ? 何をしたの?」
恐る恐る聞いてみる。
「別にニャにもしてないニャよ。 ただ驚いている間に気絶させただけニャから」
「あー。 そうなんだ、仕事が速いね……」
反応に困るなあ…… でも、おおよそ能力に目星がついたかも!
多分ナミは
「駄主人様は遅かったのニャー」
「それは気絶させるのと殺すのでは違うでしょ」
「まあ、そうなんニャけどニャー」
「そう考えると私たち、魔王を倒しちゃったんだね…… しかも意外とあっさりと……」
だって魔王さんの声なんて二回くらいしか聞いてないからね。 これは私たちが優秀なのかそれともあの死神の仕業なんか……
うーん、おそらく後者かな。 それより魔王を倒したんだから早く人間の世界に戻してよ。
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