第6話ヒロイン

「じゃあ確認していきまーす。では主人公の人は?って言っても毎年部長らしいから、銀河くんですよね?」

「まあ、はい」

「じゃあ決定で〜」

小さい拍手が巻き起こりこれで僕が主人公役をやることが決まった。

「では、次にヒロインを紹介します。ヒロインは一年の音喜多おときたさんです!」

彼女は拍手と共に立ち上がりそっと礼をした。その後は他のキャストのメンバーやセリフを確認してから個別の練習に移った。

 今回の演劇は恋愛もので結構な接触があると聞いているがよくはわからない。適当にあいずちをうちながら演出の話を聞いていた。

「とりあえずやってみてもらえるかな?」

演出の言うままに演技しているとこんな指示が飛んできた。

「んで、ここでハグしてね」

「へ??」

ハグなんて生まれてこの方やった事もないし初めてのそれは先輩にしてもらいたいと思っていたのでピンとこなかった。音喜多も顔が紅くなっていた。

「それは、絶対ですか?」

彼女も抵抗しようとしたが演出はここは譲れないと強固な姿勢を決めた。とりあえずするにしても心の準備がいるので今日のところは飛ばし手練習することにした。演出は何か言いたげな顔をしていたが仕方ない。練習終了のチャイムが鳴り片付けた後学校祭の期間中は部活停止なのでそそくさと撤収して行った。



「どう?主人公さん」

信号待ちをしていると不意に話しかけられそちらを見ると神前先輩が立っていた。

「いや、そのですねぇ」

あのことを頼むべきか否か自分の中で葛藤している。仮に頼んで拒絶された時どうなるのか怖すぎる。しかしここでチキっては初のハグがよくわからないものになってしまう。迷っていると信号が変わり二人は人気のあまりない交差点を歩き始めた。交差点を渡りきり少ししたところで先輩が自分の前に立ったと思うと瞬間に柔らかく暖かい今までで感じたことのない感覚がした。

「ハグが出来なきゃ音喜多さんも困るわよ?」

僕は先輩を強く抱き締めると先輩はこう続けた。

「たまたま通りかかった時にあの言葉が聞こえてきて二人とも困ってそうだったじゃない?あなたは彼女の先輩なんだからちゃんとリードしてあげなさいよ?」

そう言うと先輩は僕を離して歩き始めた。いつもの別れる交差点に近づいたところで先輩はこう口にした。

「私というものがありながら後輩ちゃんに手出しちゃダメよ??」

そう言うと先輩は夕暮れに赤く照らされ横断歩道を渡って行った。

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秘密の部活 楽園ロング @Rakuen-Long

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