第5話配役

 この学校には一年に一度学校祭が執り行われる。学校祭では劇や売店、教室展示など様々な出し物が出されている。実はこの学校、他の所とは違う箇所がある。それは演劇を部活ごとで行うことだ。近隣校は全てクラスごとに行っているそうだがここはちがう。体育会系、文化系問わず行われる。しかもここで入賞すれば部費が贈られるということでどの部活も本気で行っている。特にうちの部活は毎年部費のやり繰りに苦労している為みんな必死だ。去年は主人公を部長が、メインヒロインは先輩が演じていた。部長は僕の先輩に対する気持ちを薄々気づいていたのか演劇の練習が終わる度「すまんなぁ...あれ...?なんで謝ってるのかなぁ?」等と照明の僕を煽っていたのを覚えている。演劇だから...なにもない....と言い聞かせていたが唯ならぬオーラが出ていたのか他の同級生からも「そんなカリカリすなって〜」等と声をかけられたのも少し覚えている。

 その学校祭が今年ももうすぐ始まり、演劇の準備を始めようと配役を決めようと話し合っていた。

「お前、主人公でええやろ?」

「えっえぇ!?僕が!?」

不意に僕が指名され、しかも主人公と言われ困惑でしか無かった。そこに別の友達が

「だってお前部長やんか」

「まぁ、それはそうやけど僕でええんか?」

「毎年結局部長になっとるやんか」

確かに僕が部長だ。主人公は毎年やりたがる人は居らず部長がやることが恒例になっている。

「ほな、まあ、するわ」

自分がやらないと誰もやらないので自分がすることにした。ただ、ヒロインが誰がやるか気になる。勿論先輩は引退しているので居ない。女子の場合は部長が誰がやるか決めるシステムで部長がやることはほぼないらしい。

「決まった?」

「あ、うん一応決まった感じかな」

脚本担当の女子が確認しに来た。

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