第3話引退

殆どの三年生は大学受験で六月に引退することになる。これは神前先輩も例外ではない。僕はその日が来ないことを願っていたが月日は普通に過ぎついにその日が来てしまった。

「最後に神前さんが挨拶をしてくれます。」

「みなさんのおかげでここまで続けてこられました。今までありがとうございました。」

神前先輩が挨拶を終えると拍手で包まれた。

「ではみなさん受験を頑張ってください。今までお疲れさまでした。」

顧問が最後に占めると一同は帰る準備をし、帰り始めた。

「そういえば銀河君、私明日から部活行かないけどまた一人で帰るの?」

二人で話しながら歩いてくると先輩が急に問うてきた。もちろんもともと一人で帰っていたところを先輩が見つけてくださりこうやって帰り始めたので一人で帰るしかない。

「えぇ。まあ、そうですねえ...」

僕が答えると先輩はSっぽい表情をしながら

「あら、そう?がんばれ」

とあまり関心がなさそうな答え方をしてきたところでいつも分かれる交差点に着いた。

「じゃあ、また明日からも一緒に.......」

先輩が何か言ったようだがバスのエンジン音で声がかき消され最後がよく聞こえない。

「今なんて言いま...」

僕が聞き返そうとすると急に上半身あたりが柔らかい感触とシャンプーのいい匂いを鼻腔をくすぐる。

「...えっ?」

頭が真っ白になり思考力が停止しているのが自分でも感じた。

「明日になったらわかるわよ。」

そう先輩が言うと青に変わった横断歩道を渡りしばらくすると角を曲がり先輩の姿は見えなくなった。

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