第13話 タッチ


「大丈夫、おじいちゃん」


「大丈夫だよ、今は症状も重くないけどね、歳も歳だから用心して入院しているだけだから。それにお前たちにうつしちゃうといけないから用心のためだよ」

「ぐふぉ」

「おじいちゃん!」



「申し訳ありません」

「急激に容態が変わりまして」

「だから、入院させてもらったんじゃないですか」

「なぜ、ちゃんと対処してくださらなかったんですか」

「ここは病院でしょう、医者の癖にあなた達は…人工呼吸器もつけないで見殺しにしてしまったんじゃないですか!」


「いや、その人工呼吸器が間に合わなくて…」


「あなた達にはどこかの高齢者でしょうけど、子供たちにとっては大切なお爺ちゃんだったんですよ」


「お母さん、おじいちゃんはどう死んじゃったの?」

「おじいちゃん、まみだよ、目を開けて…」


「おじいちゃん、ぼくを凧揚げに連れて行ってくれるって言ったのに…」


「・・・」

「ご愁傷さまとしか…」


「おとうさ~ん」

「おじいちゃ~ん」

「マスクは絶対に、市中に余る程に流通させるではないぞ」

「そうそう、マスクも人工呼吸器も増産も何もする必要はない」

「ニュースでは増産増産と言わせておけば良いのだ」

「ところで本日の武漢肺炎罹患数はいかほどだ?」


「報告が上がってきておりますところパンデミックの結果、本日はすでに200万人ほどとなっております」


「死亡者数?」

「92万人に達しましてございます」


「高齢者っ!」

「はっ、失礼しました」

「78万9867名が、死亡、との連絡がきております」


「若いものは武漢肺炎に罹っても死ぬことなく抗体ができるから安心だが、それでも遺伝子レベルの問題か、少数の若者が死亡するのはこれは致し方ないな」

「愚者の代表みたいな役立たずのイメージコントロールも大事だからな」


「はい、さようでございます」


「そして、このまま行けば武漢肺炎はまちがいなく成功裏に収束すると思われます」

「ふむ、これ以上の高負担には耐え切れず、このままでは各国が崩壊する危険性さえあるのだったからな」


「しかし武漢肺炎とはうまく仕組んだものだ」

「米軍駐留滞在費の増額を申し出て来たときには驚いたがね」

「それもこれも、日本の高齢者率がどんどんと高くなってきていることが問題なわけだ」


「人口は減っているのに、高齢者が簡単に減らないためにより高齢者化率が高いわけだな」

「まっことさようでございます」


「1億2千万140万人が30年後には9千230万人とになるのに、その時点で60歳以上を含めたら約8000万人が高齢者となる」


「まあ、高齢者は65歳だから60代を除いても、70代からすれば約4000万人が本当の高齢者で日本は占められてしまうのだ」


「60代を含めて30年後は5000万人で、4000万人の高齢者を支えていかなければいけないのだ」


「少子化時代に一人で一人を扶養する時代が来るのだ」

「はっ、まことに持ってそれは不可能であります」

「だから、世界はアメリカの申し出に飛びついたのよ」


「中国も高齢化問題は一人っ子政策で問題が何処よりも深いしな…」

「だからこそ中国は率先して汚れ役を引き受けてくれたわけだよ」

「中国はこれで、無傷で世界に大恩を売りつけたことになったなあ…」


「我国は駐留アメリカ軍の経費全額負担とは痛い出費だが、高齢者に対しての税金投入額が減らせるのだからその辺はペイして余りあるからな、わはっはは!」


「まさかアメリカが、細菌兵器として高齢者キラーウィルスを作っていたとな…」


「一時、中国の細菌研究所が作っただの、いやアメリカが作った細菌兵器だとか、そんなデマ的に中国から情報が漏れそうになったこともあったがな…」


「中国も共産主義の割にはその辺の情報統制がなっていないな。せっかく自分の国から自然発生的にウィルスが拡散したという汚れ役を引き受けたくせにのう」


「しかし世界の指導者共の、あの演技は上手いものだなあ…」

「どこかの首相は外を出歩いているものを怒鳴りつけたり、TVでが成っていたりしている者もいたな、まっこと役者だわな」


「出るなと言えば言われるほど出たくなる。そして武漢肺炎(新型コロナウィルス)を持って帰る。高齢者が死ぬ図式だな」


「して、今後の予測は…」


「はっ、2020年度末にはご覧の65歳以上の高齢者に対する世界分布割合が、結果的に10分の1程度に抑えられると思われます」


「表は高齢化率10%以上の国を列記いたしましたが、どこの国も高齢化はこれから急速に進む可能性があり喫緊の課題となっておりました」


国 高齢化率%

1 日本→27.58

2 イタリア →22.75

3 ポルトガル→21.95

4 フィンランド→21.72

5 ギリシャ→21.66

6 ドイツ→21.46

7 ブルガリア→21.02

8 クロアチア→20.45

9 マルタ→20.35

10 スウェーデン→20.1

11 ラトビア→20.04

12 フランス →20.03

13 デンマーク→19.81

14 リトアニア→19.71

15 エストニア→19.63

16 スロベニア→19.61

17 チェコ→19.42

18 スペイン →19.38

19 米領ヴァージン諸島→19.29

20 オランダ 19.2

21 ハンガリー→19.16

22 オーストリア→19

23 ベルギー 1→8.79

24 プエルトリコ →18.67

25 スイス→18.62

26 イギリス →18.4

27 セルビア →18.35

28 ルーマニア→18.34

29 ポーランド→17.52

30 チャンネル諸島→17.3

31 カナダ→17.23

32 ノルウェー→17.05

33 香港→16.88

34 キュラソー→16.68

35 ボスニア・ヘルツェゴビナ→ 16.47

36 ウクライナ→16.43

37 米国→15.81

38 バルバドス→15.8

39 オーストラリア→15.66

40 ニュージーランド→15.65

41 スロバキア→15.63

42 キューバ →15.19

43 モンテネグロ→14.97

44 ジョージア(グルジア)→14.87

45 ベラルーシ→14.85

46 ウルグアイ→14.81

47 アイスランド →14.8

48 ロシア→14.67

49 台湾→14.56

50 韓国→14.42

51 ルクセンブルク→14.18

52 アイルランド→13.87

53 アルバニア→13.74

54 キプロス→13.72

55 北マケドニア→13.67

56 アルバ→13.55

57 イスラエル→11.98

58 タイ→11.9

59 チリ→11.53

60 モーリシャス→11.47

61 モルドバ→11.47

62 シンガポール 11.46

63 アルメニア→11.25

64 アルゼンチン→11.12

65 中国→10.92

66 トリニダード・トバゴ →10.73

67 マカオ→10.48

68 スリランカ→10.47


「なんでも1番は良いものだが、この高齢化率のずば抜けた1番だけはいただけんな」


「武漢肺炎により高齢者の急激な減少となり、当然に大幅に人口減少も発生いたします」

「そんな当たり前のことぐらい分かっておるわ!」


「それにしても武漢肺炎で世界の高齢者が死亡すれば、いや我国の高齢者だけでも9割が死亡してくれたら日本の高齢者は800万人だわ」

「社会のぜい肉が取れてフットワークも軽くなりますな、ははは…」

「総人口も6000万人程度の若い国になりますな」


「これは伸びしろもうんとありますわな」

「しかし経済の立て直しも急務だな…」

「それは後塵の若い人たちに譲ろう」


「高齢者に席を空けてもらっ、て世代交代のバトンタッチだよ」

「ぐふぉ…さてと、我々も逝く時が来たようだ…あんたも、あんたもあんたもわしも後期高齢者だわな、はっはぅはは…」


「COVID-19は65歳以上の高齢者は容赦しない、それはわしらとて例外ではない」

「まさに身を切っての苦渋の選択だった、よくもまあ世界の首脳がこんな計画に応じたものだ」

「仕方ないだろう30年後の地球のシミュレーションを魅せられてはのう」


「半数以上が高齢者の老人世界となって人生100年時代となりさらに老人は増え、年々累計化が始まったら地球上で2人に1人がわしらみたいな高齢者になり、それもすぐに老人の方が多い状態に逆転してしまうのだからな…」


「そうなっては、高齢者と若者との間で物の奪い合いで、それこそ殺し合いが始まってしまうわ」


「そうなる前に、まだ地球が余禄があるうちに、わしらが消えることを主だった世界の首脳が承諾したのだ」


「そしてCOVID-19はばら撒かれた、武漢肺炎(新型コロナウィルス)としてだな…」


「今後30数年後以降に、地球上に65歳以上は一人もいなくなる」

「それはそうだ、COVID-19により自動的に抹殺されるのだからな…高齢者のいない若い活気に満ちた新世界になるだろうよ」


「若い内に抗体ができて生存できても、高齢者になれば再感染で死ぬのだ」

「天網恢恢ならぬCOVID-19恢恢だな、ふはははあは」


「さあ、もう人工呼吸器でも息が苦しい…わしを逝かせてくれ」

「ふん、心配するな、わしらも残る者にバトンを渡して、すぐに逝くさね」


「まさに世代間のバトン…タッチだな」


「…タッチ、で・き・た・ろ・う・か…」

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