第18話 二人で

「それじゃあ、アイツを倒しに行こうか、奏多」


「し、じ、ま!」


すっかり元気になった優仁は、Yシャツの上に白衣を着込む。なんでも養護教諭として働いていた時に着ていたから馴染むのだとか。


「それで、どうやってアイツを倒すんだ?聖水、十字架、銀の銃弾…一通りは用意したが」


俺が問うと、彼は首を横にふる。


「アイツは食べ過ぎなんだ。人の記憶をたっぷり吸い込んで大きくなった。つまりそれを吐き出させてやるんだ」


「そんなんだけで倒せるのか?」


「簡単じゃないよ。アイツが吸ってきたものは主に、人が忘れたい、嫌な、辛い記憶なんだからね。それに晒されて耐えなくちゃならない」


「そいつが、俺が体験してきた地獄より酷いってんならそうだろうね」


「常人の人間の精神では耐えられないよ。だから僕が吸い出す役をやる。セフィロトの樹が出しきったら、君の出番だよ」


まるで相棒みたいに言われるとこそばゆく、俺はそっぽを向く。優仁がクスクス笑っているのが聴こえた。


「行くぞ…お前がやられても、助けてやんねえからな」


「いいとも。僕が倒れたら君もやられるだろうからね。さっさと逃げてくれ」


「だー!んなことするかよ!」


なんだかんだとこいつには敵わない。


アンジェラはまだ回復しきっていないので待機させている。俺達は二人で礼拝堂の地下へと再び足を踏み入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る