第17話 新しい名前

「名前をつけてやろうかと思って」


俺はベッドでリンゴを食べている有彦に話し掛ける。いや、彼を有彦と呼ぶのは適切ではないから、俺はこの提案をしたわけで。


「名前?僕に?…まあ、元々高次元思念体である僕には名前はないからね。有彦はこの器の名だし…」


「有彦の話はすんな。今日からお前の名前は優仁ゆうとだ」


「ゆうと?」


「そう。優しいのゆうに、仁義のじんの字だ。仁はと、とも読むからな」


彼は一瞬キョトンとしたが、表情を綻ばせる。


「僕の、名前か…僕だけの…ありがとう、静寂」


「…お前と有彦を区別したかっただけだよ」


プイッと横を向いたが、優仁からは感謝の眼差しを感じてこそばゆい。


「じゃあ僕も君に名前をつけてあげるよ。そうだなあ、奏多かなた。奏多はどう?」


「は?!俺は新しい名前とか必要ねえんだけど?」


「いいじゃない、優仁と奏多。うん」


「勝手に納得すんな!お前の仕事はさっさと回復して、あのデカブツをぶっ倒すことだよ!くだらねえ名前とか考えてんじゃねえよ。本当に出来るんだろうな?!」


相手が病人なのを忘れて俺は噛みつく。優仁は頷き。


「勿論。きちんと準備をして、君が手伝ってくれたらね…奏多」


「だーっ!俺を訳のわからん名前で呼ぶんじゃねえ!」


もう許さないとベッドに載っかり俺は優仁の首を絞めながらゆさゆさ揺さぶった。


セフィロトの樹との対決まで後1日である

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