第14話 妹の信頼

俺は有彦を背負うと、もう一度化け物本体を振り返る。


「待ってなよ。必ずお前を倒してやる」


そう言い残し地下から脱出した。


静香に連絡すると、学園近くのホテルの一室にアンジェラを寝かせているという。俺達はその部屋に合流した。


アンジェラの隣のベッドに有彦を横たえる。胸にぽっかりと空洞があいた状態でも生きている彼は、改めてみると不思議な存在だ。


「お兄様、私は鈴音が心配なので寮へ戻ります。学園は暫く、誰も立ち入れないようにしましたから…後は、宜しくお願いします」


「おいおい、俺に全部任せきりなのか?」


「お兄様なら、出来るでしょう?」


それは信頼なのか。俺は小さな頃の事を思い出す。


俺と静香が一緒に暮らしたのは小学校低学年までだ。俺はその頃から霊感が強くなり、不気味がった両親は俺を海外へと追いやってしまったから。


様々な霊を感じることが出来た俺は、彼らが普通の人間には知り得ないことを教えてくれたから、成績はずば抜けて優秀で。妹はそれと比較され、俺を妬んでいた節があった。


しかし、大人になった妹からすれば、今の俺の能力は頼れるものなのかもしれない。


「任せろ。あいつを倒し、みんなの記憶を取り戻してやる。お前の大事なあの娘の記憶もな」


「ありがとう…お兄様」


妹は微笑み、頭を下げると部屋を出ていった。

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