第11話 激戦…撤退
ワープホールを抜けた先は礼拝堂であった。そこで俺達が目の当たりにしたのは、祭壇の下から伸びる巨大な植物の弦に身体を絡め取られたアンジェラの姿である。
「アンジェラッ!」
俺は直ぐ様戦闘態勢に入る。が、男がそれを制する。
「君じゃ敵う相手じゃない、静寂」
「は?俺はニューヨークでアイツを倒してるぜ?」
「だからそれは一部で、コイツは…」
そんな風にモタモタしていると、植物の弦がアンジェラの肉感的な肢体に食い込んだ。しかも、弦の先端はうねうねとしながら彼女の修道服の裾から忍び込もうとしている。
「いやあっ!」
身を捩るも逃げられず、弦によって服がめくられ彼女の白い太ももが露になった。
「静寂っ…!助けて…!」
「なんだこのエロ触手は。ふざけやがって…俺はシスターものの安いAVなんざみたくねえよ!」
叫ぶのと同時俺は地を蹴りダッシュする。懐から十字架と一体になったナイフを取り出し、弦に斬りかかる。
「よせッ」
男の助けなどいらない。アンジェラは俺が助ける。そのつもりだった。が、切りつけた弦から緑色の粘液の飛沫があがると、それをまともに正面から受けてしまい。
「…っ!」
衣服が溶け、肌に焼けるような痛みが走る。酸だ。
「だからよせって言ったのに…下がれ!」
「うるせー!てめえなんかの世話になるかッ!」
そんな意地の張り合いが仇となる。俺の右足首に弦が絡んだ。引っ張られ、床に叩きつけられる。その力はニューヨークで戦ったものより格段に強い。また、本体は祭壇の下に隠れていて、見られない。
倒れた俺に対して、先端が鋭く尖り刺が生えた弦が迫ってくる。串刺しにされる、そう思った瞬間。
「…ぐっ…!」
俺と弦の間に割り込んだ影があった。覆い被されるようにして俺を庇い、弦に胸を貫かれたのは、有彦の姿をした男だった。
男の口から、血が溢れる。それはぼたぼたと俺の顔にかかり。
「有彦ッ!」
「…はは、僕をそう呼んでくれるのかい…?ありがとう…逃げろ、静寂ッ…」
くぐもった声を出す度にまた彼は血を吐く。俺は足に絡んだ弦をナイフで斬る。そしてアンジェラを補足している弦に向かい、術式を唱えた。
「神よ、我に力を…聖なる
目映い光が十字架から放たれる。弦はうねりながら締め付けを緩めた。その隙にアンジェラを救いだす。
今は逃げるしかない。弦に貫かれた有彦を置いて、俺は駆け出した。
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