第6話 鈴音
「アンジェラ、礼拝堂を調べておいてくれないか。…それと、有彦を預けるから見ておいてくれ」
俺の言葉に有彦がハッとする。
「僕、お兄さんと一緒にお話、聞きたいよ。だって僕のことなんでしょ?」
「有彦、お前やっぱり過去の記憶、ないのか?」
すると有彦は俯いてしまった。全くないわけでは、ないのだろうか…。
「静寂、有彦だって知る権利があるわよ。連れていきなさいよ」
アンジェラの言葉に俺は頷く。静香、有彦、俺の三人はひとまず落ち着いて話をするため、学園に隣接している寮に移動することにした。
静香の部屋は二人部屋で、下級生の女生徒と暮らしているらしい。
案内された部屋のソファーに腰掛けていると、巻き毛の可愛らしい女子が紅茶を運んでくれた。
「鈴音よ。私のルームメイトなの。そして、この事件の被害者の一人でもあるわ。彼女、記憶がないの。それに人格まで変わってしまったわ。まるで幼子のようなのよ」
静香はそう言いながら鈴音の手を握る。
「お姉さま、おきゃくさま?」
「ええ、そうよ。少し奥の部屋で休んでいてね」
「はぁい」
彼女はニコニコしながら去っていく。いなくなってから、静香は口を開き。
「大体小学生ぐらいな感じかしらね。実年齢は17だから、身体は大人、中身は子供なの」
「そいつは困るだろうな」
「いえ…むしろ彼女の場合、これで良かったのではと思うけれど」
「どういう意味だ?」
俺が問い返すと、答える代わりに静香は有彦を見つめる。
「貴方だってそうなんじゃなくて?内藤先生」
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