第4話 悪霊
有彦が俺の腕にすがるようにしがみつく。自分の名前を聞いて動揺しているようだ。が、俺は冷静に妹に言い返す。
「1ヶ月前に養護教諭をしていて、姿をくらましたって?つーことは成人男性だろ、その『内藤有彦』は。うちの有彦は見ての通り、餓鬼なんでね。関係ねえんじゃ?」
同姓同名なんてよくある話だ。しかしそんな弱い共通点だけで、妹はこの話を持ち掛けてきたのか?
「ええ、内藤先生は30代の男性でしたわ。私もお逢いしたことありますしね。ーー1ヶ月前までは」
「はっきり言ったらどうなの。関係があるとか、同一人物だというなら証拠があるんでしょ!大体、その内藤って先生が記憶障害事件と関係していたって証拠も、あるのかしら?」
思わせ振りな静香の口調に、アンジェラが痺れを切らした。きつい口調でまくし立てる。
だがそれはむしろ、不安の現れのように俺には聴こえた。
「それはー…」
静香が口を開いた時。荒々しく礼拝堂の扉が開かれた。髪を束ねた中年女性が駆けこんできて。
「内藤!漸く見つけたわけよ。よくも私を騙してくれたわね、このペテン師!」
彼女は叫ぶと同時、足元から浮き上がった禍々しい黒い霧に包まれ。まるで燃え盛る炎のように、ゆらゆらとした存在となった。
俺はひゅう、と口笛を鳴らす。何故なら?
本業の相手が現れたからだ。
ボキボキと指の骨を鳴らし、人差し指をちょいと手前に曲げて見せる。
「おいおい、うちの有彦に喧嘩売るたぁいい度胸だな、悪霊さんよ。俺が相手するぜ?」
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