第3話 聖マリアンヌ学園
車が到着した先は聖マリアンヌ学園だった。古びた造りの校舎は修道院を思わせる。蔦の絡まる壁やアーチ型の出窓からは異国情緒も漂い、歴史ある学校なのが垣間見れた。
「私の通う学園です。カソリック系のミッションスクールで、私は今隣接している寮に暮らしてますの。なので、宿泊に関しましては、お兄様たちは後でホテルに案内しますね。まずは、校舎をご覧になって頂きたくて」
はなから実家に案内する気がない妹は俺の事を理解しているようだ。起きて実家の前に車が止まっていたら、クソ親父と確実に喧嘩になったことだろう。
警備員に挨拶してから、校舎に足を踏み入れる。古風なセーラー服に身を包んだ女生徒たちは、俺達を見るとさっと身を隠して、遠巻きから観察している。
「若い男性が珍しいの。先生はいるけれど、勤務が許されるようになったのは近年だし。ここは、文字通りの女の園なんです」
妹についていくと、これまた重厚な雰囲気が漂う礼拝堂に着いた。大きなパイプオルガン、壁一面のステンドグラスが見事だ。
「ここ一年ほど。実は生徒たちの記憶喪失事件が続いているのです」
「記憶喪失?」
俺は礼拝堂の装飾を眺めつつ妹に聞き返す。彼女は頷き。
「発見された生徒たちはいずれも礼拝堂で倒れていました。彼女たちには3日から、酷い場合はほとんど過去の記憶を失う程の障害がみられたんです。でも、全員貧血と処理されて。酷い症状の生徒以外は、そのまま学園生活に戻っています」
「はあ?記憶が失くなったりしてんのに騒ぎにもならず、原因究明もされてないと?んな馬鹿な」
「ここはある種の閉鎖空間ですからね。先生やシスターが問題にしなければ、ならないのですよ」
俯きながらそう言う妹の表情は憂いがかっている。
「私も身近な存在が酷い記憶障害になるまで、この学園の異変に気付きませんでしたわ。でも、学園に勤めていた養護教諭が姿を消してから、事件は少しずつ明るみになっているんです」
静香は言葉を切る。そして俺の手をしっかりと握りながら青ざめている少年を真っ直ぐ見つめながら言った。
「養護教諭の名前は、内藤有彦ーー姿を消したのは1ヶ月前です」
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