第2話 車中にて

今回はアンジェラと有彦も同じ車に乗っている。前回のような危険がないとも限らないから。我が妹は助手席だ。


「で?学園ってのはお前が通う聖マリアンヌ学園のことか?そこで何が起こってるんだって?」


俺は脚を組みふんぞり返った姿勢で車のシートに凭れながら妹に尋ねる。


「あら、その前にお連れ様を紹介してくださらないの?そちらの女性は?お兄様の恋人さんかしら」


「残念ながらただの仕事仲間です」

「残念だがただの仕事のパートナーだよ」


俺とアンジェラの声が重なった。それを聞いて有彦がくすくすと笑いを溢す。


「つーか、俺の事ぐらいどうせ調べあげてんだろ?お前と親父で」


「…私とお父様を一緒くたにはして頂きたくないのですが、まあ、そうですわね。シスターアンジェラ。お兄様の師匠兼パートナー。性的な関係はなし。と、調査報告書には」


やはり調べられていたか。ますます俺は不機嫌になった。この抜け目ない妹のことは昔から好きではない。


「はいはい。そーですよ。後は何?スリーサイズでも調べてんの?で、貴女は?静寂の妹?」


アンジェラもぶっきらぼうだ。素性を探られて楽しい人間などいないから当たり前だが。


「…もっと色々、貴女の過去についても報告は届いていますが、それをお兄様の前で言うほど私は意地悪ではありませんわ。…はい、私は九条静香と申します。貴女のパートナーの妹です」


「そりゃどうも…貴女のひねくれたところはお兄さんそっくりね!」


アンジェラが悪態をついた。彼女の過去について、俺は何も知らない。が、出来ればそういう話はいつか本人から聞きたいものだ。


自己紹介だけで険悪な雰囲気が流れ、有彦がおろおろとしている。

それで俺はもう会話を打ちきることにした。


「…取り敢えず、車を降りてから詳細は聞くわ。俺はちょっと仮眠するから、有彦とアンジェラも眠れるなら寝とけよ。…これから、何が起こるかわかんねえからな」


どうせ、ろくなことは起こりはしない。

が、それが有彦に関わることなら、俺は避けては通れないのだ…


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