セフィロトの樹 九条静寂の冒険3

第1話 新たな事件

ハーピーを退治し帰国の予定であったが、妹の話を聞かねばならなくなったので俺達は日本に留まることとなった。


飛行機のチケットはキャンセルした。妹の様子から簡単に済む話でないのはわかったから。


「お兄ちゃん…」


『学園で事件が起きている』『有彦が関係している』妹の言葉を有彦は聞いていた。不安そうに俺の手を握ってくる。


「大丈夫だ、心配するな。何があろうとお前は俺が守るよ」


そう言い、俺は彼の小さな手を握り返した。


さて、遅くなったが自己紹介しておこう。

俺の名前は九条静寂。せいじゃく、と書いてしじまと読むんだぜ。


俺の仕事はエクソシストだ。ニューヨークを拠点とし、相棒のシスターアンジェラと共に悪霊に限らず様々なバケモン、人ならざる存在を退治してきた。


有彦は、ニューヨークで邪教集団に生け贄にされかけていたところを俺が助けた少年で。


彼の胸の中には夢喰花という不思議な花が住み着いており、人の記憶を吸いとる能力がある。


有彦は恐らく俺と同じ日本人だが、彼はその過去を語らないので、両親がどこにいるのかもわからない。もしかしたら記憶がないのでは、と思うこともある。


とにかく成り行きで俺は有彦の世話を見ており、日本に仕事で来た今回も彼を同行させた。


が、現れたのは有彦の家族ではなく、俺が尤も逢いたくないと考えていた俺の親族、つまり妹だった。


妹が語る学園の事件とはどんなものなのか?

有彦が関係するとは、一体…。


また、何か厄介な事が始まろうとしている。

俺の直感がそう告げていた。


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