第43話 悠希?

 翌朝、公園に着くともうタクマは到着していた。


 当然昨夜は酒を飲んだあと家からは追い出した。


「冷たいなー。こんな日くらい泊めてくださいよー」


 と嘆いてみせるタクマを冷たくあしらったマハリ。


 こんなところでもし間違いでもあったらたまったもんじゃない。そう思って。


 ゲームでこの身体を選んだのは気まぐれ、だ。


 別にネカマをやるつもりも無ければ女性になりきりたかったわけでもない。


 只々女性キャラの方が見た目が綺麗な服が着れる。デザインがカッコいいものも多かった。


 身に付けるアイテムも豊富。


 男キャラはゴツいだけで面白味もない。そんな選択でしか無かった筈。


 それに。


 そう、一度ぐらいは異性になってみたいって思うよね?


 と、軽い気持ちで選択しただけのキャラクターだった。



 浅黒くスレンダーなボディ。


 すらっと伸びた脚。


 指の先まで繊細な造形が行き届いているアバター。


 胸は、まあそこそこ。でも、筋肉質なバスト。


 そんな抜群なプロポーションも気に入っている。


 顔はもちろん。思いっきり好みの顔に似せて弄った。


 ちょっと少年のような面影もあるそんな顔を、思いっきり美人に寄せた。



 だからって、こんな所で本当の女として人生を送ることになるなんて、考えもしなかった。



 ゲームでは考えられなかったような現実な生理現象に戸惑い。クランの本物の女性に助けてもらったりもした。


 そんなこんなでこの数年。


 まだ高校生だった時からもう三年。この世界にきて過ごしている。



 だから、だ。


「オレは男なんぞに惚れたりしないから。お前、期待しても無駄だぞ?」


 そうタクマには昨夜釘を刺して置いた。


「いいんっすよー。こんなふうに構ってくれるだけでも」


 と、意に返さないタクマの頭をゴシゴシっと撫で、そのまま家から閉め出したのだ。


 絆されそうになる自分を絶対に許容できないから。マハリ・アジャンはそんなふうに頭を振って。




「よお、早いな」


「ねえさんおはよおっす! ほんとありがてえ。まだおひさん登り切るまでには時間があるんでその辺で飯でもどうですか?」


「朝は食ってきたよ。ってお前朝飯食ってこなかったのか?」


「はは……。ちっと先立つものが無くってですね……」


 もうしょうがないな。飯を奢ってやるとか言うとまた調子にのるし、どうするか……?


 そう逡巡していた時。




 公園の入り口に一人の女性が現れた。


 華奢で、小さくて。


 ずいぶんと女の子女の子したその、彼女。




「うそ……。悠希……?」

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