第44話 人違い。タクマ違い。
そこに現れたのは、そう、思いっきり好みの顔だと自分のアバターの素にもした、親友。
でも、悠希は……。
少女少女したその可憐な容姿。しかしその顔は間違えようが無い。三年前に自分の親友だった佐藤悠希。
キョロキョロとあたりを見回してるその姿に……。
まさか、でも、今更どんな顔して会えばいいって言うんだ?
「あれ? あの女の子、ねえさんに似てますね? もしかして妹さんとかです?」
そう、タクマののほほんとした声にマハリは我に帰った。
「まあでもねえさんがあの子の姉さんだとしても俺はねえさんの方が好みっすけどね」
「ばかやろう」
と、タクマの頭をはたくマハリ。
まあしゃーねーか。あれがタクマを探す理由にも納得した。
「おい。あれならオレがついていなくても心配ないだろう? とりあえず呼び出されたのはお前なんだからさ、はなししてこいよ」
「そうっすね。心当たりは無いから人違いかも。じゃあ俺行ってきますね」
そう言ってちょっと心なしかウキウキした感じで早足で彼女に近づくタクマ。
マハリはそのまま、少し離れたその場所から二人の様子を見守る事にした。
「よう、お嬢ちゃん」
声をかけると一瞬びくりとした彼女。
「ごめんなさい。あなた、勇者タクマさん? ですか?」
気を取り直したようにそう聞いてきた。
「はは。勇者、か。なんだか懐かしい呼び名だよな。ゲームの時は確かにジョブが勇者だったんだぜ? これでも。まあ、そんな自信もこの世界に来て消えちまったけどな」
タクマは頭をかき、そう言って。
「そうさ。俺、勇者タクマって名乗ってた。昔の話だけどね?」
と、続けた。
「ボク、佐藤悠希、です。タクマさん、一ノ瀬拓真って名前、心当たりありますか?」
「あー。そういうことか。君も巻き込まれ組って事だよね? 残念ながら俺は一ノ瀬じゃない。坂本拓真っていう名前だったんだよね。元世界では」
「そうですか……」
途端に表情が暗くなる彼女。
ああ。大事な人だったのかな? この娘にとって一ノ瀬拓真ってやつ。そんなことを考えながら。
「まあ人違いなのは残念だけど、よかったら飯でも食いに行かないか? そこに連れも待ってるんだけど、俺たち二人ともあんたとおんなじ境遇だからさ。もしかしたら力になってあげられるかもしれないし」
そう誘ってみてから彼女の表情がこわばっているのに気がついたタクマ、
「あーあー。連れっていうのは女性だからさ、心配しなくてもいいから」
と、少し慌てて付け足した。
と。
「あはっ」
と、相好が崩れた彼女。
ああ。やっぱりこの娘かわいいな。
そう、自分も笑顔になるタクマ。後ろを振り返るとなんだか鬼のような形相のマハリが見える。
え? なんで? 俺、何か悪いことした?
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