第15話 おんなじ顔。

「えー。違う違う。ボク、そんなんじゃないよ?」


「んー、そっかなぁ。前にお見かけしたお顔とそっくりに見えるのに」


 え?


「そんなに……、似てる?」


「似てるー、と、思うよー。ああでもごめん。あたしも実は遠くからお見かけしただけだから、そう言われると自信ないかも」


 そう、舌をぺろっとだして笑うマーリン。なんだかすごく愛嬌があって。


 っていうかそういえば、なんだけど。


 ボクの顔って、ボクのまま、だったよね?


 だからセリーヌ演ってよねって言われてもピントこなかった。


 そんなのすぐバレるに決まってるって頭っから否定してたし。


 まさかほんもののセリーヌさまがボクとおんなじ顔をしてるだなんて、普通思わないよね。


「ねえ、シルヴァはセリーヌさま知ってる?」


 そう小声で聞いてみる。


「ああ。俺が知ってるのはお前だけだぞ?」


 そうにこにこ答えるシルヴァ。見えないけど尻尾をぱたぱた振ってるワンコみたいな笑顔。


 もう、なんだか耳と尻尾もあるのかもとか思っちゃう。


 さっきから姿を消しているフニウだったらわかるのかな? セリーヌさまのお顔って、どんなだか。


「ああそうか。セリーヌさまは大聖女様に似ておられるのか。通りで何処かでお見かけしたような気がしていたよ」


 リーダーさん(ダントさんっていうらしい。みんなの会話聞いてて分かったんだけどね)がそうこちらに来て。


「聖女様、こちらをどうぞお持ちください。お荷物にならないよう纏めましたがこちらは換金可能な素材ばかりです。どうか我々のお礼の気持ち、受け取ってください」


 そう、皮の袋に入った素材をくれるダントさん。


「ごめんなさい。じゃぁ遠慮せず頂きますね。ありがとうございました」


「ところで、聖女様の目的地はどちらです? このまま南に向かうとアンダーノウスがありますが……」


「ええ、そこですそこです。ここから一番近い街? みたいなので……」


「そうでしたか。実は我々もアンダーノウスに帰るのです。よかったらご一緒しませんか? このまま徒歩だとたどり着く頃には夜も更けてしまうでしょうし」


「よろしいのです? 助かります」


「それなら、街に着いたらこのリザードドラゴンの肉を上手く調理してくれる食堂に案内しますよ。今夜はそこで食事でもご一緒しませんか? 旅館も併設してますし便利なところなんで」


「ああ。それは嬉しいです。ほんと何から何までありがとうございます」


「ほんとお礼を言いたいのはこっちなんですから。じゃぁそろそろ出発しましょうか。遅くなる前に街に着きたいですしね」


「はい」


 あらかた解体できたリザードドラゴンは魔法の荷車? 見たいのにのせて。


 ああ。こういうのは便利かも。普段はちっちゃくなってていざって時に大きくなる荷車。


「マジックアイテムだね。まあ君には要らないけど?」


「フニウ! どこ行ってたの?」


 ふわっと耳元に現れたフニウ。


「ああ、ごめん。消えてたけど実はずっとそばにいたんだけどね。というか、僕あんまりたくさんの人の前には姿現したくないんだ。今は実は見えてるのは君だけなんだよ?」


「え? 他の人には見えない、の?」


「ああ。さっきもこうしてそばにいるのは可能だったんだけど、そうすると君がかわいそうな子に見えちゃうだろ? だから消えてたの」


 ああ、そっか。


 確かにね?


 こんなふうに何もないところで喋ってるとおかしい子扱いされるよね。


 しょうがないなぁ。

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