第10話 創造のギア オプス。
草原を行く。
最初はトントンと飛ぶように走っていたシルヴァだったけど平地になったら少しスピードを落としてくれて。
今は並んで歩いているところ。
もしかして、ボクを気遣ってくれたのかな? そうも思ったけど口にはしないでおいた。
なんとなく悔しいじゃない? だから。
でも。
あんなに走ったのにそんなにきつく無かった。なんだかこの身体けっこう体力あるのかな?
もともとのボクはちょっと走っただけでへろへろになっちゃうような軟弱な身体だったはず。そういうところも違いがある。
違い、と、言えば他にも。
手足の感じ。
もともとのボクもチビでそんなに大きい方では無かったけど、この身体はさらに華奢にできている感じ。
手足がほんと細いのだ。
特に、手。
指も前より細い気がする。
もしかして背も縮んでるのかな? そうも思うしね。
胸の隆起もあるっていうだけでそんなにたゆんたゆんしているわけでは無かったし。走ってもぜんぜん揺れなかった。ちょっと痛かったけど?
ん? 痛かったってことは少しは……?
ううん。もうやめ。
どっちにしても胸もささやかだって話。まるでこれじゃ中学生女子にしか見えない、かな。
きゅって触ってみると、なんだかゴムまりのように硬いものが皮膚の下にある感じ。
触ると痛いし、ねえ。別に気持ちが良くなるようなそんなものでも無い。
想像とは、ちょっと違ったな。
そんなこと考えて。
お日様もずいぶんと高いところまで上がってきた。
まだお昼にはもうちょっとありそうだけど本格的にお腹が空いてきて。お水も飲みたいし。
そうお水お水って渇望するように考えてたら……。
パシャ!
目の前に水の塊が浮いてた?
いきなり現れた水の塊に、ボクは顔を突っ込んじゃったみたい。
弾けて飛ぶ水滴に驚いて。
口の中に入っちゃった水も飲んじゃったけど……。美味しい!
「あうあうびっくり! 何が起きたの? フニウ、シルヴァ、何かした?」
「ううん、僕は何も?」
「俺もなんにもしてないぜ?」
「じゃぁどうしていきなり水が……」
フニウがボクの目の前にふにふにと来て。目の中を覗き込むように近づく。
「ねえ、セリーヌ。君今お水の事考えてなかった?」
と、そう。
確かにお水お水って唱えてたけど、心の中で。
「考えてたけど……」
「それだよ! 君の願いに大気中のオプスが反応したんだよ!」
え?
「オプス、って?」
「この世界に満遍なく存在するギア。その中でも物質を創造する権能をもつギア・オプス。それが君の心に反応して水を生んだのじゃないかな?」
って、そんなこと……。
「あ、そっか。ギアの説明もまだしてなかったっけ。街について落ち着いてから、って思ったけど……。どうしよう少し休憩する?」
「街はまだ遠いの?」
「うーん、このペースだと夕方くらいかな。到着するの」
うきゅう。お腹、空いたなぁ。
「じゃぁ俺、何か食べれるもの調達してくるからさ、そこの岩陰で休もうぜ」
「ありがとう……。じゃぁ、少し休む、ね」
ごめん。シルヴァ、ありがとう。
心の中で悪く言っててほんとごめんね。
ボクはそう、ちょっと反省しつつ、近くにあった少し地面が隆起した感じの岩陰に潜り込み腰掛けた。
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