第9話 ナビゲート。

 結局のところ、フニウの説明はよくわからなかった。


 って何? この世界のセリーヌ・マギレイスは実在してて、だけどある日いきなりいなくなっちゃって。


 なのにフニウはそのセリーヌから今日のこの時ボクが現れるから面倒を見てあげてと頼まれてて。


 現れたボクがセリーヌだから、って。




 なんだか荒唐無稽なお話。




 それでもね。


 この子がそんなに嘘をついてるとも思えない。


 流石にボクがセリーヌだっていう話はほんと信じられないけどね?


 居なくなったお姫様のセリーヌが、ボクを身代わりにしたって話? だったらわからないでもない。


 でもさ?


 おひめさまが居なくなって、で、ボクみたいのが身代わりに現れたからっておひめさまができるわけないよね?


 偽物だと牢屋行きになるのはごめんだよ。




「ねえ。で、これからボクはどうすればいいのかな?」


「ん?」


「って、何かする為に呼ばれたわけじゃないの?」


「ああ。何をしても良いんじゃないかな?」


 フニウはコテって小首を傾げ。


「僕が頼まれたのは君が無事にここで生きていけるようにサポートする事だから。流石に記憶も何にもなしの君を放り出して知らん顔できるほど鬼じゃないつもり」


「んー。じゃぁ、おひめさましなくて良いって事?」


「お城に帰りたいならちゃんとサポートするよ? しっかりお姫様ができるようにさ」


 お城、あるんだ。


 そうだよね。


「ううん。お姫様はちょっと勘弁、かな?」


「じゃぁやっぱり聖女でもするといいよ。君にはそれだけのチカラがあるんだからさ」


 え?


「っていうか黙っててもそうなっちゃう運命なんだけどね?」


 って、まって。


「僕は君がしたいことをできるようにこの世界をナビゲートしてあげる為にここに居るんだから。なんでもしたい事、すればいいよ? 全力でサポートしてあげる」




 そう言ったフニウの笑顔はやっぱり凄くもふもふでかわいかった。






 ☆☆☆



「なぁなぁ。何をしても良いとは言っても当面どうやって食っていくかの方が重要じゃね? とりあえず街に行こうぜ?」


 って、シルヴァもお腹、空くの? っていうかボクも……。


「そういえばなんだかお腹すいちゃった、かも?」


「よし、決まりだな。なあフニウ、此処から一番近い街はどっちだ?」


「街なら南に行った所にアンダーノウスって名前の街があったかな? わりと大きくてなんでも揃う所さ」


「よーし。じゃぁそのアンダーノウスに向かってしゅっぱーつ」


 右手をあげそう掛け声をあげるシルヴァ。


 スキップでもするかのように飛び跳ねて高台を降りていく彼を追いかけて、ボクも走った。




 街、か。


 どんなところか気にはなるけど。


 拓真……。ここがゲームの世界で無いのなら、もしかしてボクはもう拓真に会えないのかな……?


 それが一番、悲しかった。

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