第2話 人は、そうなりたい自分になるんだよ。

 真っ白な世界。


 ここは……?


「はーい。気がついた? じゃぁ早速キャラメイクといこうか?」


 え? 何?


 目の前をぷわぷわ浮いている猫?


 ちょっとかわいい猫のぬいぐるみみたい。白っぽい毛色なんだけど所々クリーム色で。


 かわいい赤いチェックのベストを着てる。


 二本足で歩いているような動作で空中をぷわぷわ移動してるそのヌイ、ううん、ネコ。


「僕の名前はフニウ。君のナビゲーターだよ?」


 と、そうのたまった。


「ナビゲーター?」


「そう。この世界は複雑だからね。迷わないように僕が案内してあげる」


 ああ、それは嬉しいかも。このねこ可愛いし。もふもふだし。


 って、初心者用の何かなのかなこれ?


「じゃぁ早速君のキャラメイクからねー。まずどんな服がいいか選んでねー」


 え? キャラメイクっていったら容姿から作ったりするものじゃない?


「って、容姿の選択はないの?」


「え? 容姿? そんなもの選択できるの?」


「えー? 出来ないの?」


「人はさ、自分がそうなりたい自分になるんだよ? だからもう君はちゃんと自分になってるはず。選択って、変装みたいなもの? それならそういうマジックアイテムがない訳じゃないけど僕持ってないよ?」


 あうあう、って、ボクどうなってるんだろう……?


「ってことで服は色々用意したから好きなの選んでねー。お化粧は、必要ないね。すっぴんで充分綺麗だもの」


 はい?


 フニウがどうやったのか前足のにくきゅうをぽんと鳴らしたと思ったら、目の前にドレッサーと衣装ケースが現れた。


 ちょっとアンティークな可愛いドレッサーにでっかいタンス2つ分くらいな大きな衣装ケース。


 鏡に映る姿をよくみようと鏡台を覗き込むボク。


 そこには理想のボクが映っていた。顔立ちは今までとほとんど変わらないけど髪がするっと伸びて背中まである感じのロングヘア。

 もともと癖毛だったからちょっと緩くパーマでもかかったかのようにふわふわだ。


 そして。


 真っ白な頭からかぶった感じのゆったりしたワンピースにはたゆんとした胸の隆起が見て取れる。


 って、えー?


 下半身の感じも、たぶんこれは……。


「ねえフニウ。これって、ボクって、女の子になってる?」


「はは、何を今更。君、性別女性で登録されてるよ? この世界で」


 その言葉に、ボクの頭は真っ白になって。


 そのまま数分固まってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る