三度目の転生は猫でした【マシンメア=ハーツ】 〜もふもふと恋愛はどうするんですか!?〜

友坂 悠

第1話 親友? じゃ、なくて、恋。

 ブン!


 その三本足の黒い塊は触手を鞭のように飛ばしボクに迫る!


 嫌! 怖い!


 真っ黒な霧が辺りに立ち込め身動きが取れない?


 なんで!


 鞭がボクに当たると思った瞬間。


 バン! と、ボクの手前で何かに阻まれるその触手。


「もう、世話がやける!」


 そんな声が聞こえたかと思った所で意識が途切れた。



 ☆☆☆




 ピンポーン。


 玄関のチャイムが鳴った。


「キラネコ宅配便です! お荷物お届けに参りました」


 インターフォンのモニターから見えるのはいつもの制服の業者さん。あやしい人じゃないね。


「はーい。今行きますー」


 そう答えて玄関に急ぐ。リビングの扉を開こうとしたら猫のミーコが一緒に出ようとしてるから抱き上げて。


「ごめんねミーコは出れないの」


 そう棚の上によっと乗せて扉を開けてサッと出る。


 出たらちゃんと鍵をかけて。


 最近自分で扉開けちゃうから要注意。


 サンダル突っかけて玄関を開ける。と、そこには宅配業者さんが待っていて。


「ごねんなさいお待たせしました」


「はい、こちらのお荷物です。サインお願いします」


 ピピッと端末を動かしてこちらに渡すその人に、ちょっとにっこり笑みを返しペンを取り画面にサインをする。


「ありがとうございます」


 と、その業者さんの彼はそうさわやかな感じで車まで駆けて行った。




 荷物の宛先は佐藤悠希。うん。間違いなくボクの名前。


 ああ、嬉しい。これでやっと拓真と同じゲームが出来る!



 一ノ瀬拓真。同じクラスで一応親友。と、ボクは思ってる。


 背が高くってちょっと日本人離れした顔立ちの彼はまだ転校してきて間もなくて、あまり友達も沢山居ない感じなんだけど、なんだかボクには色々よくしてくれて。

 コミ障のボクには珍しく仲良くなれた男友達なんだよね。

 っていうか、他の男子はちょっと苦手。

 小学校の時も中学校の時もずっと、いじめられてる訳じゃないんだけどずっと、ボクは男子にとっては何処か違う、『部外者』だった。


 ボクにとっても彼らは『異性』としか思えない存在だったからお互い様なんだけどね。


 かといって、女子はまた違う。

 彼女たちの輪には入れない。

 どうしようもない『差』がそこにはあって。


 結局のところボクはいつも一人。


 そんなボクに対してほんと自然に接してくれる拓真はものすごく貴重な友達で。


 え? それって嘘じゃないかって?


 あー、もう。


 そーだよ。悪い? 友達、なんかじゃない。


 ボクは彼の事が好き、なのだ。


 こんな事、面と向かっては言えないし隠し通さなきゃダメだとは思ってるけどもそれでも。


 好きなものは、しょうがないじゃない。



 まあ。


 そんな彼が最近ゲームにどっぷりで付き合いが悪くなった。ちょっと悲しい。


 って、ならボクもそのゲームをやってみようかなって。


 そうすればきっと話題も増えるしね。ゲーム内で一緒に遊ぶ事だってできるし。


 そう思ってお小遣いをはたいて買ったのがこのマシンメア=ハーツ専用ヘッドギア。


 アークテクトファクトリー社製のこのギアは、従来のVR機とは比較にならない完全没入型。脳波に直接干渉する事で五感全てにおいて完全にそのVR世界に入り込めるという触れ込みで。


 まあ、SF小説とか映画とかではもう随分前から存在するようなそんな技術。


 脳波に干渉っていうのはちょっと怖いけど、でも。


 拓真がハマってるんだもん。たぶんきっとそれだけ魅力があるのかな?


 ええい。ままよ。


 早速梱包を開いたボク。ソファーに寝そべってギアのスイッチを入れた。


 ミーコがにゃぁにゃぁ可愛い声で鳴きながらボクの上に乗ってきたところまでわかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る