ヒューマノイド・ターミネーター's

@AZUMAOU

第1話

「・・・ハハッ・・・」

透き通った青空と人の骸とターミネーターの残骸の海が無限に広がる大地に、男は一人乾いた笑い声を出していた。それは第三次世界大戦で大切な隊の仲間たちが灰や鉄屑になったからではない。

「ゆかり・・・なんでお前がこんなところにいたんだよ・・・。」

 疎開してアメリカにいるはずの結婚予定の彼女が日本の戦地に鮮血を大量に流して死んでいるからである。それもこの男が敵と間違えて対ターミネーター用アサルトライフルを十数発も発砲してしまったからであった。しかもそのうちの3弾は、きれいに脳を貫いている。はっきり言ってこれぞ最悪である。

「何とか言えよゆかり!!」

 しかし、彼女は何も答えない。いや答えられるはずもない男が殺してしまったのだから。

 そうこうしてるうちに敵のドローン兵器が空から地上から迫ってきている、早急に迎撃せよと本部より通信が入る。しかし、男に応答する気力が全くない。


 このままドローンに殺してもらおう・・・。その方がこれから生きていくよりもマシであろう。


しかし、男は自分で死ぬことができない。何故なら・・・。

「K74型ナンバー007。こちらの通信に応答せよ。さもなければ、人格を無くし、奴らと同じ殺人マシンに変えざる負えない。応答せよ繰り返す・・・。」

 そう、この男は人間の脳と神経だけを取り除かれ人型殺人マシンに体を移植された人型殺人兵器だからだ。つまり、人としての意思を持たされたまま、人としてのほとんどの自由を奪われている存在なのだ。よって自殺することは不可能なのである。

男は脳内に送りつつけられている通信にただ一言、「了解」と応答した。


男は、迫りくる戦車型ドローン部隊に対し、攻撃を実行しながら、ある疑問を抱き続けていた。

 

”何故ゆかりがこの戦地に一人でいたのか”


ゆかりは、兵士になったことのない民間人のはずなのである。もしかしたらこの体に脳を移植される前に何か記憶をいじられてしまっているのではないか。そう考えるには、はっきりとした理由がある。それは、男自身の記憶を思い出そうとすると、無理やり思考を止めあれるのである。ゆかりの情報に関しては、何故か思考が止められていないのも不思議である。

そう思考した男は、こう決意する。まるで何者かに導かれるように・・・。


この体が朽ちる前に、必ず「俺」という存在を調べなおし、なぜゆかりがこの戦地にいたのかを突き止めて見せる、と。


ここから男の「人」としての戦いが始まるのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヒューマノイド・ターミネーター's @AZUMAOU

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る