現場
あたしたち3人はソータが消えた河原に来た。
美由紀ちゃんが今頭さんにグールを呼び出すように命じ、河原に連れてきたのだ。
時刻は21時を回っている。
美由紀ちゃんはあたしに、アリッサにバレると面倒いから帰れと言ってきた。あたしはママは夜勤だから弟さえ丸め込めば大丈夫と話し、半ば強引についていく。
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今頭さんが呼び出したグールは、白昼夢で見たままの姿で笑った。
いや、本当に笑ってはいない。
犬のような顔の黒いカンガルー、動物の愛くるしさは微塵もない。ただただいまいましい。
白昼夢と一点違うところは、異臭がスゴい。
腐った臭いとカビの臭いと獣臭が混ざっている。
少しだけ吐いてしまった。
唾を吐くようにサッと音もなく吐く、誰にも気づかれませんように。
美由紀ちゃんはグールに話しかける、アンタ怖いものなしか。
「四の五はいい、はぐれ堂に行きたい」
スゲー簡素。
いやいや流石にクリーチャーといえども、説明なさすぎ。判らんよ。
「ワカッタ」と聞き取り難い破裂音でグールは一言。
判ったの?知り合いか何かで?マジ友か?
でも協会とグールって協力関係にあるって話してた気もするね。
でもソータ拉致した訳だから、関係は破綻してない?
「ジョウケンガ アル」とグールが要求。
「ソウタロウ ガ モドッタラ ヤクソク ハタセ ト ツタエロ」
「判った、伝えるわ」美由紀ちゃん承諾。
約束?話についていけない。
「コイ モン ハ コッチダ」
先を行くグールについていく美由紀ちゃんは、少しだけ今頭さんに振り返り「いろいろ、ありがとう今頭さん、わたしからのせめてもの感謝の印として忠告だけど、妃陀羅のことも妹さんのことも忘れて何処か知らない土地でひっそりと暮らすことをお勧めするわ」と何時も通りの冷たい無表情で話す。
「さようなら」美由紀ちゃんは今頭さんに別れを告げ、グールを追う。
あたしも美由紀ちゃんの後に続こうと、今頭さんに素早く会釈しようとした時、瞬間彼と視線が重なる。
あたしは「あっ、くる」ったと思いながら、白昼夢に突入してしまう。
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