グール
多くの情報が開示されていないわたしでも、グールのことは少しだけ知っている。
協会の付随魔力制御カリキュラムでは原則、遭遇したクリーチャーに対してはある程度の基本的情報は開示されることになっている。
一度肉眼で見てしまえば『情報に見ることが引っ張られることはない』という判断だ。
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グールは人間や動物の死骸を食べて生きるクリーチャー。
腐敗臭と黴臭さが混じった異臭をさせる。
人間と話すこともできるが、早口で音が割れているので聴き取るには慣れが必要。
凡ゆる地域に潜み暮らしているが、警戒心が強く人前に姿を見せない。
そんなグールは、魔術で呼び出すことが可能なクリーチャーだ。
呼び出しても使役はできないが、取引はできる。
用意した貢物などが気に入れば、ある程度の助力や助言は得れる。
グールたちは移動や身を隠すために、門と呼ばれる異空間通路で結びついた出入口を人目に触れないように配置している。
魔術の印を刻まれた石門はグールやグールが連れ去った者以外には効果を発揮しないため、それが空間移動を可能にする門だとは見た目判らない。
門は立てかけていても、横倒しでもかまわない。
ちなみにグールたちは地域毎にコミュニティーを形成して群れで暮らしている。
各コミュニティーも連帯を取り合っているらしいが詳しいことは協会でも把握できていない。
コミュニティーにはそれぞれ名前が付いている、もちろんこれは協会が便宜上つけたナンバリングでありグールたちがそう呼び合っている訳ではない。
瀬越丘陵地域に生息するグールのコミュニティーは『タルタロスの子ら』と呼ばれている。
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聡太郎様は拉致され河原に連れ去られた、その企てにグールが加担している。
主犯は恐らく上井戸鷹人という妃陀羅の神子。
今頭礼央が推測しているように聡太郎様には触媒としての特性があり、妃陀羅を召喚する際に必要だった。
アリッサや協会は聡太郎様の特性を知っていたのだろうか?恐らくは知らないのだろう。
知っていれば日本の高校への入学を許可するはずはない。
懸念が生じる。
『聡太郎様は既に協会が保護している』という可能性だ。
河原で聡太郎様に声をかけた男性は、恐らく中島さんか比留間さんだろう。
2人もしくはどちらか1人が、妃陀羅の脅威から聡太郎様を救出している可能性。
例えば、ヴァルゴは寄生中に小暮さんから記憶を盗み取り『わたしが見鬼であり情報の開示が限定されている』ことを知る。
ヴァルゴは聡太郎様の生死が自分の裁量にかかっているかのように思わせ、わたしを利用しようと企てる。
この懸念を排するためにはアリッサに報告が必要だ。しかしこの推測が的外れな場合、聡太郎様を見殺すことになる。
またこの懸念が正しくても聡太郎様は既に協会の保護下にあるのだから、わたしがヴァルゴに利用されたところで失うのはわたしの命とある程度の協会の損失だ。
そうならば、やはり選択肢は1つだ。
わたしは、はぐれ堂に行きヴァルゴと取引をする。
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