アパート【美由紀】

わたしは放課後、白いブラウスとネイビーのロングスカートに着替えて小早川と出かける。

小早川も協会の活動のため山村邸に何着か私服を置いている、黒いシャツとスキニージーンズに着替えた。

スキニーか、まあいいけど。


市内巡回バスに乗って20分程の場所にある金田という住宅街で下車する。

小早川が話していたドラッグストアはこの地区にあった。


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小早川は入店して数分で、店長から今頭礼央の家までの道を聞き出した。


何だ、この女の男を堕とす手練手管。

オッさんもオッさんだ、いいのか?個人情報ダダ漏れやぞ。

美人性善説なぞの信奉者か何かで?


聡太郎様にこのビッチスキルが向けられた時は小早川マジコロス思ったけど、使えるなビッチミズキ。まあ気にくわないのは変わりない。


今頭の住むアパートは、ドラッグストアがある住宅街にあることが判った。近いので今から乗り込もうと小早川が言い出す。

おい怖いものなしかと思ったが、時間も惜しいのは確か。

わたしの同意の返事に被せて小早川が話す「ヴァルゴっていう同居人がいるって」


えっ?ヴァルゴ?

小早川、何を言っている?

「ヴァルゴ?」わたしは聞き返す、身体の中に冷気が充満していくような悍しい寒気を感じる。


「え?違うよ、ハルコだよ」

ハルコ?


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漢字は春子か、晴子か。

店長は小早川を今頭の恋人と間違えていたので、恐らく妹か、姉。


家に2人いる可能性がある、今頭礼央の体調不良は仮病か、本当か?


そんなことを考えながらアパートの前に到着する、割と新しい建物だなと観察していると小早川は臆面もなくアパートの一階部分を見て回り一番奥の部屋の前で「美由紀ちゃん、ここだよ」と大声でわたしを呼ぶ。


はぁ?何やってんのアンタ?

わたしが激怒に切り替わる刹那、考えなしにドアノブに手をかけて「あ、開いてた」

わたしは数秒固まって動けなかった、絶句。

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