はぐれ堂【水希】
美由紀ちゃんが淡々と話しだす。
これはあたしもソータを助ける仲間だと認めてくれたのだろう、ヤバい嬉しい。
正直、美由紀ちゃんには嫌われていると思う。
協会のことも、クリーチャーのことも、何も知らない、あたしにイライラしているのだと思う。
それでも、あたしを頼ってくれるのはソータが一大事なのを差し引いても『あたしを美由紀ちゃんが必要としている』から。
がんばらないと。
ソータのように、美由紀ちゃんの話をまとめてみる。
25日の火曜日。
美由紀ちゃんは、あたしと別れた舎人さん比留間さんたちとソータの警護任務を交代して『はぐれ堂』へと向かう小暮さん榎本さんたちに同行する。
はぐれ堂とは今は誰も住んでいない集落跡のことらしい。詳しいことや何故そこに行くかは美由紀ちゃんは知らされていない。
これは美由紀ちゃんが『見えないクリーチャーを見る』ことができる見鬼と呼ばれる能力をもっていることが理由らしい。
とにかくこの能力を活用するために、美由紀ちゃんには多くを教えない決まりになっている。
そのはぐれ堂で美由紀ちゃんは『見えないクリーチャーを見た』もちろん小暮さんや榎本さんには見えない。
クリーチャーの大きさは、2メートル以上。
あたしが見たプラネテスより一回り大きいという。
手足のない、ボーリングのピンのような体の底には無数の触手が生えている。
首から下は、滑り照かった青い鱗に覆われ、首から上の頭らしい部分は肌が白く目鼻がない。
そこには縦長の口と思われる裂け目だけがある、裂け目の中には乱杭歯が犇いている。
その頭部には髪の毛の代わりに、黒いスライムのような粘液の塊が付着していたという。
こんなクリーチャーを白昼夢で見たら、そう思うとゾッとする。
そのクリーチャーに小暮さんは刺され、その時は判らなかったがクリーチャーの分身を埋め込まれていたらしい。
次の日に美由紀ちゃんたちがソータの家に帰ってくる、この時ソータが行方不明になったことを美由紀ちゃんはアリッサから教えてもらえなかった。
クリーチャーの分身は小暮さんから抜け出して、美由紀ちゃんの頭の中だけに聞こえるテレパシーで話しかけてきたという。
クリーチャーから美由紀ちゃんは、ソータが命の危機に晒されていると聞く。
ソータを助けたければ、クリーチャーは取引に応じろと要求してくる。
取引内容はクリーチャー本体に遭遇した、はぐれ堂で伝えるという。
条件はアリッサに気づかれないこと。
クリーチャーは名前を教えることはなかったが、代わりに美由紀ちゃんが勝手に名前をつけていいと言ってきたらしい。
名前ってそういうものかな?と思ったが美由紀ちゃんもすごい、クリーチャーに名前をつけてしまう。
『ヴァルゴ』と名づける、処女宮という意味つまり乙女座のことだという。
「何で?」と思わず聞いたら「わたしがピスケスだから」意味が判らない。
でも、それ以上は聞けなかった。
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