今頭礼央【美由紀】
「あたしが美由紀ちゃんやソータに話した白昼夢が、きっかけなんでしょ?」
黙っているわたしに小早川は切り出した。
「美由紀ちゃんが、これから何をするかは判らないけど、何をしたいかは判るよ」
今迄になく言葉が強い。
「あたしもソータを助けたい、2人で助けよう」
小早川の言葉に思わず怯む自分が信じられない、小早川に押されている自分が。
わたしが反論する前に小早川が畳みかけてくる。
「ソータと美由紀ちゃんに昔見た白昼夢の話をした次の日、あたし舎人さんと比留間さんに連れられて記憶を見た男の人の確認に行ったの」
----
小早川の話。
その白昼夢を見たのは小早川が中学生の時。
偶々訪れたドラッグストアの店員の男性の記憶で、記憶の中で男はグールと呼ばれるクリーチャーと遭遇していた。
男は今でも、そのドラッグストアで働いているらしい。舎人さんと比留間さんに連れられて小早川は放課後、ドラッグストアへと向かう。
道すがらの車中で、男性は『今頭礼央』という名だと聞かされる。
昨日話した次の日には白昼夢の裏が取れている協会の素早さが、正直小早川は怖かったという。
ドラッグストアに到着すると、まず舎人さんが店内を確認。今頭礼央と思われる男性の服装などの特徴を比留間さんと小早川に伝える。
先に比留間さんが入店、続いて小早川が入店。
小早川は舎人さんから聞いた特徴の男性が、白昼夢でリーディングした男性か確認してから適度に買い物をして店を出る。
比留間さんは小早川が入店後に、男性つまり今頭礼央に不審な点がなかったか確認後に店を出た。
結論からいえば、今頭礼央は小早川が中学生の時にリーディングした男性だった。
『あんなに背が低かったかな?』と疑問を口にすると『水希ちゃん中学の時より、背高くなってない?』と舎人さんに言われて納得したという。
今頭礼央は、突き出した目と巻毛。
背は低くて痩せていたという。
比留間さんの話では、こちらに気づいた様子はなく、気になるような怪しい素振りもなかったという。
その後小早川は2人に家まで送ってもらう、次の日学校に行くと聡太郎様とわたしが休みだと知る。
それが昨日、26日の水曜日のことだ。
----
小早川が一方的に話している内に、わたしは自分の気持ちを整理できた。
結論からいえば『小早川水希には協力してもらう』
もちろん、彼女は協会員になったばかりで役不足だ。足手まといになる可能性は高い。
しかし、小早川にバレてからの混乱が落ちついて冷静になってみれば、優先されるのは聡太郎様の命であって小早川の命ではない。
連れ回していればアリッサに白昼夢のことは伝わらない、足手まといなら死ねばいい。
わたしは彼女からの協力を受諾する返答として、はぐれ堂の一件と昨日のクリーチャー『カスのカスこと、ヴァルゴ』のことを話す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます