白昼夢【美由紀】
4月27日、木曜日の放課後。
図書準備室にて、小早川水希にアリッサからの伝言を話した。
その直後。
小早川の視線は焦点が合わないまま、わたしを見つめる。きっと、これは白昼夢を見ている最中なのだろう。
彼女は白昼夢という形で、クリーチャーと遭遇した他人の記憶を知覚できる。
----
「美由紀ちゃん、その赤い目玉咥えた白い蛇?みたいなヤツ何?」
早速バレたー、もうヤダこの女。
めんどくせーな、嗚呼どうすっか。
殺す?否、協会内の私闘は御法度。
仮でも協会員だしな、この巨乳ビッチは。
正直扱い難い、能力以外は一般人なのが厄介。
アリッサにバレないで行動するのは1人では厳しいかー、わたし2回目だあ、記憶読まれたの。
昨日、今小早川がリーディングしたクリーチャーに『アリッサにバレずに、はぐれ堂に来い』と脅された。
指示に従わなければ、聡太郎様の命はないという。
聡太郎様は、わたしが所属するチームが保護している協会総裁の御孫であらせられる。
たとえ後にアリッサに黙っていたことがバレて制裁を受けようとも、結果チームを裏切ることになっても聡太郎様は救い出さなければならない。
だから、正直小早川に会うのは嫌だった。
小早川の白昼夢リーディングでクリーチャーとの遭遇がバレる恐れがあったからだ、そしてわたしの懸念は的中した。
例えば、わたしがクリーチャーの要求に従い『はぐれ堂』に行く。
わたしの所在が確認できないことを知ったアリッサが小早川に聴取し、彼女はこの白昼夢リーディングの内容をアリッサに報告する。
アリッサは『風景や他の登場人物やトレースされたわたしの心情』などのリーディング情報から昨日の出来事だと気づくはずだ。
小早川のリーディングは、クリーチャー遭遇時の記憶保持者の心情もトレースできるらしい。
わたしがクリーチャーから何かしらの情報を得ていたこと、それを隠していたことはアリッサに見抜かれるだろう。
そこから多くのことを推測されてしまう可能性は高い。
「わたしの気持ちもトレースできた?」下手に邪推するより、ダイレクトに聞いてしまえ。
小早川はイヤなヤツだが、悪いヤツではない。
「怖がってはいないよね、でも焦ってたね」
どうだ?この情報からアリッサは、わたしがはぐれ堂に向かうことを推測できるだろうか?
「クリーチャーがいる椅子、血がついてるね」
ハイ終了。
これは確実にバレます、アリッサに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます