第72話 現実を見せられた時
私はろくに身体を拭く事なくお風呂場から自室に駆け込む。
部屋に戻り思いでのスクール水着を脱いだ……。
お兄ちゃんとの思い出……お兄ちゃんは思い出さなかったけど……。
「……お兄ちゃん……結構……成長してた……なぁ」
ううう、照れる……恥ずかしかった。でも……ようやくお兄ちゃんの本心が聞けた。
やっと話が……お互い思っていた事を話せた。
あの両親ならとは思っていたけど、そこまではっきり言っていたとは……。
本当にあの両親には腹が立つ……人を人と思っていない……。
だから私はこの家から出ていった。極力援助をして貰う事なく。
お兄ちゃんがいなければ……こうやって帰ってくる事はなかっただろう。
そして……雪乃さんの事は、私の予想通りだった……やっぱりお兄ちゃんは雪乃さんを私の代わりにしていた。
あの二人……私がほっとけば多分いつかは付き合ったのかも知れない……でも……多分付き合ったら気付くだろう……お互いが既に家族の様な存在になってしまっている事に。
雪乃さんの方は既に気付き始めていた。
お兄ちゃんとの関係を進めたいと考えた時、気持ち悪いという感情が自分の中に芽生え始めた事に……。
だから中学の時、お兄ちゃんから離れたのだろう……陸上に逃げたんだろう……。
日本一になったらって、そう自分に言い聞かせて……お兄ちゃんとの繋がりを残そうとして。
「女の子は多かれ少なかれ……現実を見せられるからなあ……」
生理が来れば妊娠出産という現実を見せられる。好きな人との将来を考えさせる。
お兄ちゃんとの将来を考えた雪乃さんは……そこで思ったのだ……お兄ちゃんとの関係を気持ち悪いって。
弟の様な存在のお兄ちゃんに対して、そう言う事を考えた時……気持ち悪いって……。
でも……やっぱり側にいたい、側に置いておきたい……それは雪乃さんのわがまま……って誰もが思うだろう……。
私以外は……。
私も同じ気持ちだから……。
お兄ちゃんと一緒にいたい……ずっと一緒に……。
勿論私とお兄ちゃんは結婚出来ない、そんな事を考えた事も無い。
お兄ちゃんとキスしたり、エッチな事をするなんて、気持ち悪いだけ。
だからといって嫌いなわけじゃない……むしろ好き。
そんな複雑な気持ち……雪乃さんのそんな気持ちは痛々しい程わかった。
だから関係を、幼なじみという関係を一度壊した……壊させた。
そこまでは上手く言っていた……のに。
お兄ちゃんがそこまであの芸能人か、あのゴスロリ同級生に依存していたとは……信じられない。
そんな短期間の間に……。
一体あのゴスロリ女のどこにそんな魅力が……いや、確かに可愛いかったけど。
でも可愛さだけなら雪乃さんの方が一枚も二枚も上手……。
あの時はただの興味本意だけなのかと、お兄ちゃんに片思しているだけなのかと思っていたけど……どうもお兄ちゃんはあの芸能人よりもゴスロリ同級生の方が本命な気がする……。
「これは……明日探ってみなきゃ駄目かもね」
何がそんなに良いのか? 雪乃さんとの数年間をあっという間に覆した女……。
一体彼女にどんな魅力があるのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます