第61話 私の野望
パパとママは良くも悪くも現実主義だった。
自分が普通じゃないと気が付いたのは小学校3年の時……。
教科書を全部暗記して褒められようとしたのが切っ掛けだった。
お兄ちゃんも同じ事が出来たので、それは普通の事だと思っていた。
まあ、お兄ちゃんは私の年では出来なかったけど。
そこから私はパパに、お兄ちゃんはママにそれぞれ詰め込む様に教育された。
教育と言っても勉強では無い、生きていく上での教育。
生き方、マナー、世の中の仕組み、様々な情報を教えられた。
「それを生かすも殺すも自分流次第だからな」
最後にパパにそう言われた。
情報があっても知識にはならない。
知識にするには経験が必要だ。
だから私は海外に行った。
経験を積むために。
そして知識を得た。知識欲という物に目覚めた。
それと同時に、私の家庭の異常さを知る事になった。
留学先でホームステイした時に、そのホストファミリーの暖かさ、家庭の暖かさを知った。
知らなければ良かった……。
家は異常だという事を知ってしまった。
それを知った私は、滅多に家に帰らなくなった。
殆ど帰らない両親、本に填まってしまい自分の殻に閉じ籠ったお兄ちゃん、それを見るのが嫌だった。
ただパパとママ、お兄ちゃんは嫌いではない、特にお兄ちゃんは大好き。
でもこの家庭は嫌いだ。
そして私は今後も海外に行く予定だ。
自分の知識欲を満たす為にこれからもずっと……。
ただ、帰る所は欲しい……日本に帰る所はやっぱり欲しい。でもこの家では無い、この家庭では無い、それ以外で帰る所が私は欲しい……暖かい家庭が欲しい。
だからお兄ちゃんだ。
お兄ちゃんが雪乃さんと結婚して子供が生まれて、家庭が出来て……私は若くして叔母さんになるの!
勿論叔母さんなんて呼ばせないけどね。
雪乃さんとお兄ちゃんなら、私も家族同然として受け入れてくれる。
小さい頃から知っている雪乃さんは私を妹と思ってくれている。
だから二人には付き合って貰いたかった、結婚して貰いたかった。
だけど、二人はいつまで経っても相手を好きだと認めない、遠慮ばかりしている。
私は一つだけ後悔している。
家族をお兄ちゃんを省みなかった為に、お兄ちゃんは寂しさからか、自分の中で家族を作ってしまった。
お兄ちゃんは雪乃さんを私の代わりにしてしまったのだ。
お兄ちゃんの雪乃さんに対する好きは、家族としての好き……。
だから壊した。二人の関係を一度壊した。
幼なじみと結婚しない最大の理由はトキメキが無いから、家族になってしまうから。
家族とエッチしたいって、子供を作ろうなんて思わない、そんな事考える人はごく一部の……変態だけ。
だからお兄ちゃんには、これからときめいて貰う。
勿論雪乃さんに……。
お兄ちゃんは雪乃さんと結婚しなければならない。
そうすれば私の野望が叶う。
勿論お兄ちゃんの事も考えている。
お兄ちゃん間違いなく雪乃さんが好き、今は勘違いしているだけ
雪乃さんも一緒だ。
さあ、始めよう、私の帰る所、新しい家族を作ろう。
それが私の野望だ。
私が自由に生きる為に、お兄ちゃんの為に、雪乃さんの為に。
「二人には……結婚して貰うからね」
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