第60話 本物の天使様と堕天使様
本当に、お隣に天使様がいたわ……。
俺はふわふわと正に足が地に着いていないとはこの事か? と思いながら家に帰った。
妹の靴はない……どこかへ行ったのか?
玄関で誰もいない事を確認し、部屋に戻る。
母さんは今日夜勤だろうか? 父さんは今いずこへ?
超放任主義の両親、小学生の時、詰め込む様に一通り教育され、後は好きに生きろって事で、俺も妹も今は好きに生きている……。
良くも悪くも無駄な事はしない両親、恋愛も無駄な事と、大学時代に意気投合してそのまま結婚、子供二人、男と女と決め、見事に作ったそうだ……。
まあ、その両親に育てられ、俺も妹もやっぱりどこか人と違う……そう思っている。
「無駄な事……か……」
そんな教育を受けたばかりに、人生なんて無駄な事……って思う時もあった。
でもそんな思いを救ってくれたのが雪乃と小説だった。
そして……今はあやぽんだ。
ベットに寝転びスマホの画面を開き画像フォルダーをクリック……あやぽんの画像の中でも一番のお気に入りの物を開く。
「そうだよなあ……どうりで……」
あやぽんの画像でも、お気に入りとそうでもない物がある。
ずっとおかしいって思ってた。
全部が良いって思えなかった……何が違うかわからないけど……。
イベントでも時々泣きたくなるくらいの感動を感じる事があった。
時々だけど、しっくり来る時が。
不思議だった。その不思議を解くために出来るだけあやぽんに直接会いに行っていた。
「双子か……」
さすがに気が付かなかった、違和感としか……。
まさか双子だったとは、爺ちゃん、謎が全て解けたぜ!
つまり……俺が好きなあやぽんは二人いるって事だ。
そして本当に好きなあやぽんは……。
「うへへへうへえ」
俺の隣に神様が……天使様が……。
謎が解け俺は気持ちがハレバレとしていた。
まるで難しい数学の問題を解いた時のような快感が、そう、フェルマーの最終定理(3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z) )は存在しないって問題が解けた時の様な感動が……まあ、それは最終的に妹に……「間違ってるよお兄ちゃん」って言われたんだけど……あと、詰め将棋のミクロコスモスを数ヶ月かけて解いた時も感動したなあ……妹は数時間で解いたって言ってたけど……。
それにしても、思い出すだけでイライラしてくる……くっそ忌々しい妹め……。
そうなんだ……いつもいつも俺は、あの妹にしてやられる。
最近は、留学していたからとホッとしていたのに……。
「……まさかあいつ……また何か企んで無いだろうな?」
いつも裏でこそこそ何かやっている……。
今回帰ってきた理由も良くわからないし……しかも来年うちの高校に入学すると言い出す始末。
「勝ってな事ばかりしやがって……」
両親の仕事柄、お金には不自由していない……だけど妹は援助はいらないと、自力で留学費用を調達する。
そして俺が小遣いで、ラノベや漫画を買っているのをほくそ笑む様に、蔑む様に見る。
そう……俺は妹が嫌いだ。
「……でも……いないとそれはそれで寂しい……んだよな……」
複雑な感情……家族ってこういう物なのだろう。
今はそう割りきっている。
でも俺はまたそんな妹に振り回されるのだろう……そして何も言えない、言い返せないで振り回され続けるのだろう……多分。
「お兄ちゃん! いる?!」
「うわわわわ!」
「なんだ居るじゃん」
「確認してから扉を開けろ!」
丁度妹事を考えていた所で妹が部屋に飛び込んでくる。
「えーー見られたら困る事でもしてるの?」
「してるわ! いや、してねえわ!」
「エッチな本を小遣いで買っちゃ、駄目だぞ!」
「うるせえよ! なんだよ? なんか用で来たんじゃ無いのか?」
「あ、ああ、そうそう、お兄ちゃん明日暇?」
「あ? 忙しい」
「明日プールに行くから準備しておいてね、後、夜はちょっと良いレストランにも行くからタイもね」
「は? お、おい!」
言うだけ言って部屋から飛び出ていく妹……一体なんなんだ?
俺は立ち上がると、とりあえず水着とジャケットとネクタイをって……。
「あああ、早速振り回されてるううう……」
頭を抱えたその時スマホからメッセージが入った音が!
『未読スルーごめんなさい……ずっと悩んでいた事、言えて良かった(。´Д⊂)』
「おおおおお、天使からのメッセージが……」
ああ、癒される……神様の啓示……が心地よい……。
あやぽん様……俺の天使様……そして……妹は堕天使様……。
明日は一体何があるのだろうか?
俺の長い夏休みは、まだまだ続く。
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