外面のいい幼馴染みに、いいように使われた、だから俺は彼女よりもいい女と付き合う事にする。そして出会った女子は秘密でモデル活動をしていた隠れ美少女だった?
第10話 少しずつ少しずつ……仲良くなっていたのに……。
第10話 少しずつ少しずつ……仲良くなっていたのに……。
遂に綾波と話が出来る様になった。
ずっと話したかった。ひょっとしたらって思ってたから。
綾波の読んでいる本にずっと興味があった。
隠していた俺の趣味との共通点。
まあ綾波の読んでいた本はラノベでは無いのだけど、そもそもラノベとはなんだって所から始まってしまうし、そんな事を議論していると永遠に答えは出ない。
挿し絵のある本?……それが最近の絵なのか古い絵なのか?
昔の本にも挿し絵はあったのだから。
綾波の読んでいた本や作家は俺も面白いと思った。
既に読んでいる作家達もいる。
綾波のお父さんの本は、昭和の頃に流行ったりしていた物が中心だとか……勿論今でも現役の人達もいる。新作もいまだに出ている。
綾波は周りに人がいない時、俺に今読んでいる本を照れくさそうにそっと見せてくれた。
真っ赤な顔で、まるで下着でも見せるかの様に……。
俺はそれを見て、ウンウンと頷いたり、首を傾げたり、笑ったりする。
俺の表情を見て、綾波は嬉しそうに口角を上げて笑ったり、ほっぺを膨らまして怒っている様だったり、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしたりしていた。
眼鏡や髪の毛のせいで、表情はわかり辛らかったけれど、言葉は交わさなかったけれど、それでも意思は通じた。心で会話が出来た気がした。
そして少しずつ少しずつだったが……なんと綾波が俺に話しかけて来る様になった。
綾波と、会話出来る様になった。
誰とも打ち解け無かった人が、少しずつだけど話してくれる様になり、俺は少しだけ優越感に浸っていった。
そして、少しずつそんな綾波に惹かれて行った。
「綾波、これ面白かったよ」
昼休み、周囲人がいないのを確認した俺は、いつもの様に一人本を読みながら弁当を食べている綾波に声をかけた。
「──本当に?」
小さな声なれど、そう言って嬉しそうな顔で俺を見る綾波。
「うん、最後が秀逸だった、まさかって展開に驚いたよ」
「うんうん」
「推理小説も良いねえ、後ヒロインが可愛い」
「最後に殺されちゃうけどね」
「そうなんだよおおお、酷い!」
「ふふふ」
「今日は何を読んでるの?」
「今日は……」
綾波は本を俺に見せようとしたが、直ぐに俺から顔を背け、いつもの様に下を向いた。
「──え?」
「だーれだ!」
その直後、背後から俺の目を隠しベタベタの質問をしてくる。勿論俺は振り返らなくてもその声の主がわかった。
「──雪乃か……」
「正解~~さすが、私の彼氏だねえ」
「彼氏って冗談は……ああ、まあね」
誰が彼氏だ冗談はよせって言おうとして俺はその言葉を呑んだ。
そうだった……俺はこの間、雪乃に頼まれたんだった。中学の時の様に、告白を断る為の理由として。
俺と雪乃は幼なじみ、そして中学の時から付き合っている事になっている。
俺と違って雪乃はモテる。明るい性格、綺麗な顔、陸上で鍛えらた美しい容姿。
誰に対しても常に笑顔で接している……昔からそうだった。
友達にも親にも教師にも……そして……俺にも。
そんな雪乃が一番困っている事は、モテる事。
モテるので、当然ちょくちょく告白される──事になるのだが、それを断ると角が立つ。
女子からは疎まれ、男子からはいい気になるなと言われる。
そこで俺の存在だ。
中学の時、俺と雪乃が幼なじみと言うのは周知の事実だ。
故によく周りから付き合っているのか? と聞かれたりしていた。
通常俺なんかが雪乃と付き合ってる、ってなると何故あいつが?と疑われたりするんだろうが、そこに幼なじみというワードが入る事によって、信用が増す。女子は子供の頃からの純愛だと喜ばれ、男子からは羨ましいと言われる。
そう、幼なじみと付き合っていると言う事実は、陸上に専念、集中したい雪乃に取って非常に都合が良い。
そして俺にとっても、雪乃と付き合っているという事になっているのは、非常に嬉しい事だった。
たとえそれが嘘でも……。
そもそも俺は本当に好きだったのだから……全く困らない、そのせいで誰とも付き合えないって事になっても……俺は全く困らなかった。
むしろこうやって雪乃と話せる事が嬉しかった。構って貰える事が嬉しかった。
でも……今は……。
「何か用か?」
俺は雪乃そう言った。折角話をしていたのに、折角綾波と楽しく話をしていたのに……。
「えーー、ただ会いに来ただけだよ~~私の彼氏にね」
そう言って雪乃は俺の首に背後から腕を回す……背中に雪乃の胸の膨らみが当たる。
そしてそのままたわいもない話しをしてくる。
周囲に見せ付ける様に、そして……綾波に見せ付ける様に……。
俺は……何も言わずに、ただただ聞いていた。セイレーンの様な雪乃の声を、難破するとわかっていても聞いてしまう船乗りの様に……悔しくも心地よい雪乃の声を……俺は……そのまま、ただ──聞いていた。
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