A white crow
「俺はそのことを話しに来たんだ。今まで黙っていたことを話す時が来た」
その目つきに気圧された。何かあるような気がして、私は怖くなった。
「何? 今から何言われたって変わらない。私の記憶は確かにあんたに奪われた」
記憶の一番最初はいつも秋人の脅える顔から始まる。暗くて狭い場所で息をするのもつらい記憶。
「美冬、今だから言う。それは勘違いだ! 俺が記憶を奪ったわけではない」
「嘘だ。あの後にあんたは自分のせいだと言っていた。そこからはしっかり覚えてる。病院の先生も秋人がそう言っている限りそうだろうと言っていた」
それを聞いて何か思い出したのか、秋人は若干相好を崩した。
「ああ、俺は嘘をついた。……ただ、俺が嘘をついたのは三年前だ。先生も俺の話を聞き入れてくれてそういう答え方をした」
「そんなことがあるわけない!」
私の拒絶に顔色一つ変えずに、秋人は何を思ったのか片膝を地について左腕を差し出した。
「なぁ、これでも思い出せないか?」
「何が?」
「英国紳士のポーズ、あの時は確か右手だった気がするが……今日は左手。その時の言葉は――俺と付き合ってください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます