A white crow

「俺はそのことを話しに来たんだ。今まで黙っていたことを話す時が来た」

 その目つきに気圧された。何かあるような気がして、私は怖くなった。

「何? 今から何言われたって変わらない。私の記憶は確かにあんたに奪われた」


 記憶の一番最初はいつも秋人の脅える顔から始まる。暗くて狭い場所で息をするのもつらい記憶。


「美冬、今だから言う。それは勘違いだ! 俺が記憶を奪ったわけではない」

「嘘だ。あの後にあんたは自分のせいだと言っていた。そこからはしっかり覚えてる。病院の先生も秋人がそう言っている限りそうだろうと言っていた」

 それを聞いて何か思い出したのか、秋人は若干相好を崩した。


「ああ、俺は嘘をついた。……ただ、俺が嘘をついたのは三年前だ。先生も俺の話を聞き入れてくれてそういう答え方をした」

「そんなことがあるわけない!」


 私の拒絶に顔色一つ変えずに、秋人は何を思ったのか片膝を地について左腕を差し出した。

「なぁ、これでも思い出せないか?」

「何が?」

「英国紳士のポーズ、あの時は確か右手だった気がするが……今日は左手。その時の言葉は――俺と付き合ってください」

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