第5話 機械仕掛けの神
「あ、そうだ! もえにプレゼント用意したんだ!」唐突にミカは言った。
「えっ?」
「ほら、今日誕生日じゃない。だからさ」
「それはうれしいけど。何で急に? 前貰ったの50年ぐらい前じゃない?」
「なんとなく。って理由じゃだめかな? それと、モエにあげたい物が手に入ったからね」あげたい物? なんなのだろう。
「それでプレゼント私の家にあるんだけど、来てくれる?」すこし不安な表情でみかは聞いてきた。
「ええ、もちろん」
「誕生日おめでとう!」そう満面の笑みでミカは二つの小包みを渡してきた。一つは青いリボンがついていて、もう一つは赤いリボンがついていた。
「赤い方からあけてね」その言葉に従い、私は赤いリボンの小包みを開けた。中には手作りのハート型チョコレートが入っていた。色がやや普通のチョコレートより暗い事から、私の好きなビター味だと言うことが分かった。
「ありがとう!」と私は心からの感謝を述べる。
「どういたしまして。それで青い方なんだけど……その……喜んでもらえるかどうか……」青いリボンの小包みは横に少し細長く、結構な重みがあった。
「私があげたい物なんだけれど……もし気に入らなかったら……戻してくれていいから……」自信がなさそうに彼女は俯く。
「大丈夫だよ。みかがくれたものなら何でもうれしいよ」私はそう声を掛けて青いリボンの小包みを開ける。
中から出てきたものは円筒状の金属の上部に赤いスイッチがついた物だった。スイッチには誤作動防止の為に蓋が付いている。
「なにこれ?」私は正直な感想を漏らした。
「えっと……その…」
「スイッチを押すと何か起こるの?」私はスイッチの蓋を開けようとした。
「あああまってまって! まだ押しちゃだめ!」みかは慌てて私の腕を掴む。その慌てように私は何かを察した。
「もしかして……これって、何かの爆弾?」そう私は聞くとみかはコクリ、と頷いた。
超小型核爆弾。それがミカ・クェス・マキナの二つ目のプレゼントだった。起爆すると半径百メートル程度の爆発を起こし、その中に爆発の中にいる人は跡形も無く消えてしまうらしい。もちろん細胞修理で復活する事もできない。
「ごめんなさい……」半分涙目でみかは謝ってきた。私は全く怒っていないのだが。彼女がこれを渡してきた理由は分かっていた。以前、彼女と話したときに「死ぬ」事を話していて、でも完全に死ぬなら跡形も無く消え去るしか方法が無いかな、と私は言ったように思える。
私は無言でみかを抱きしめた。「え?」と意外そうに彼女は私を見つめる。
「ありがとう」正直、チョコレートより嬉しかった。
「でも、いいの? その、私が死んでも寂しくない?」
「ああ、そのことなんだけどね。私も一緒に死んでいい?」
「もちろん!」私は笑顔で答える。
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