第9話 大和の過去

学校に着きいつものように教室の前で手を振って

わかれた

最近は葵のことより柚月のことの方が多く考えてしまっている

大和に「葵だけがいればそれでいい」なんて言ってしまった手前少し恥ずかしい気もするし申し訳ない気もする


「おー宙空、柚月ちゃんとはどうだ??」

「聞いて驚くな、少しだけ口を聞いてもらえた」

「え?まじで!良かったじゃん」


なぜか知ってたような感じに聞こえた


「昨日薫になんでお兄さんと話してないのか聞いてみてよって頼んだとこだぜ。これで一歩前進か?」

「余計なことを・・・」


そんなこと言いながら内心では少し嬉しかった。もしかしたら理由が知れるんじゃないかと思って


「ってかお前理由知ってるんじゃないの」

「んーなんとなくって感じだし、柚月ちゃんもどんな反応すんのかなって♪」


この時俺は大和が小悪魔に見えた


「そ、そうか・・・」


微妙な反応で返した俺に大和は


「葵のことほったらかしにするなよお前。大丈夫か?」


柚月のことばっか考えてたなんて大和には言えない

俺は


「大丈夫大丈夫」

「葵のこと泣かしたら許さないぞお前!」


ふざけたように聞こえたが真剣にも聞こえた

葵と付き合った頃聞いた噂話でしかないが大和は葵が好きという話

にわかには信じがたいが俺ら3人は中学から一緒でもあるし

可能性はなくもないんだろうと思った

大和は優しいから相談にも乗ってくれるし

邪魔したりはしないだろうけど葵を泣かせたら許さないという言葉はほんとだろう


         ※

中学2年生の夏。三神大和はものすごくモテた

サッカー部のキャプテンで顔もイケメンその上優しいときた

すごくお節介なのは置いておいて大和がモテない理由がない。

そんな大和に告白してくる人は何人もいた


「大和くん付き合ってください!」


後輩、先輩、同級生たくさんの人から告白された。

その度に「ごめん好きな人いるから」

と毎回断っていた。

それから一年。最後の夏の大会が終わったら好きな人に告白する予定でいた。

そうその相手こそが葵だ。


俺は大会が終わった後、応援にきてた葵に


「話がある」


と連れ出した

周りからは

「告白?!」

などといろいろな声が聞こえてきたがいまいち良く覚えてない


俺は連れ出した葵に


「ずっとお前のことが好きだった。俺と付き合ってくれ」


と告白をした


「ごめんね、大和。私宙空くんのことが好きなの」


正直俺はなんであいつなんだよ。と思った。

今となっては親友であるがこの時は特別仲良くもなかったし

クラスでも目立つやつではなかった


「どうしてだ?あいつになにがあるっていうんだ!」


俺は必死になって聞いた


「宙空くんは、いつも私を助けてくれる。目立つ子でもないし明るい子でもないけど

陰でいろいろなことをみんなのためにしてる。そんなところに惚れたの」

「そっか」


そう言い俺は戻っていった

それから俺は葵が好きな宙空が気になった

陰でいろいろしてるって本当なのかってしばらく観察した。

みているうちに葵が言ってることがわかった。

俺が落ち込んで放課後教室に一人でいた時、宙空が話しかけてきた

たくさん話を聞いてもらった。葵が好きな人が誰かっていうのは伏せたつもりだった

他のやつだったら自分のことだって察しがつくだろうけど、こいつは超天然野郎だから

まったく気づいていない。

俺は、これは勝てねえって観念した。

そこから俺は葵と宙空が話す機会を作ったり三人で遊んだり

葵が幸せになってもらえるように色々した。

もちろんそんなことにも宙空は気付いていないだろうけどね。

こうして今の葵と宙空そして俺がいる

そんな過去があったからこそ宙空が葵を泣かせたら許さないと言ったのだ


             ※


時は今に戻る。

俺は大和に言われた通り今は柚月のことばっかり考えてる場合ではないと思った。

柚月のことで頭がいっぱいで葵のことをほったらかしにしてしまったと反省しながら

ちゃんと葵のことも考えないと、そう思いながら放課後待ち合わせ場所の門へと向かっていった。


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