第8話 一歩前進



朝まだ眠そうにしながらリビングへ朝食を食べにきた

そこには制服を着た柚月が先にご飯を食べていた。

昨日、いろいろな人に相談しいろいろな事実を知った俺は

柚月を見る目が変わっていたと同時にどうすればいいかわからなかった


「お、おはよう」


リビングで誰に向けたわけでもなく何時もより小さい声で言った


「あら、おはよ」


母さんは俺にいった

柚月はこちらをチラッと見ただけでなにも言わない

いつも口を聞いてくれていなかったから気にしていなかったけど

いつも俺がおはようとかおやすみとかいうといつもこっちを見る。

俺がしっかり柚月のことを見ていなかっただけで

柚月は俺に話しかけてもらうのを待っていたのかもしれない

そう思った俺は


「ゆ、柚月・・・」


久しぶりに柚月の名前を呼んだ


「なに?」


柚月は俺にそう答えた


「いやなんでもない」


まさかほんとに俺が勘違いしてただけだとは思わなかった

複雑な気持ちで朝ごはんを食べてると


「いってきます!」


といつもより元気そうな柚月の声がリビングに響いた

母さんはいつも通り


「いってらしゃい、気をつけてね」


と柚月にいう


「いってらっしゃい・・・」


俺もほんとに小さな声で柚月に言った


口を聞いてもらえるようには一応なったのだろうか

無視はされなくなった

でも、なんで口を聞かなくなっていたのかはいまだにわからない


「宙空、今日デートなんだっけ??

遅くなる?」

「うん、夜ご飯は食ってくる」

「そう・・・」


母さんは柚月が俺に反応してことについてはなにも言わなかったけど

泣きそうな顔で喜んでいたのを覚えている


「俺も学校行ってくるね」

「うん行ってらしゃい、あんまり遅くならないようにね」


玄関を開けいつもの葵との待ち合わせ場所へ行った

柚月が口を聞いてくれたのが少し嬉しくて

上機嫌でいつもの場所へ向かった

早速、葵に今朝のことを伝えようとした


「葵、おはよ!!」

「おはよう、宙空くん。なんかご機嫌だね!」


葵も嬉しそうに言った


「葵聞いてくれよ、柚月が口聞いてくれたんだ。ほんの少しだけど俺に口を聞いてくれたんだ!」

俺は今まで葵に見せたことのないくらいのテンションでいった


「そうなんだ。良かったね・・・なんか宙空くんいつも私といるより嬉しそうだね。」

「そんなことないよ!」


俺はこの時、葵の気持ちに全く気付いていなかった。柚月のことで頭がいっぱいだった


「私達、今日で一年なのにそれよりも柚月ちゃんに無視されなくなったことの方が嬉しい?」


葵は少し意地悪そうにいった。ふざけていったように聞こえるけど

葵はすごく悲しそうな顔をしていた。


「そ、そんなことないよ!同じくらい嬉しい」


この無神経な返答に葵は


「そっか。今日はどこ行くんだっけ」


葵にとっては聞くに耐えない話だったのだろう

話を変えてきた

相変わらずそれに気付かない俺は


「遊園地行くんだろ!」


と答えた

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