第十一話 まりか
「まじ死んだ……。」
スマホがネットとつながらない。
スマホを落としただけなのに、それとも嵐の予感を感じさせるこの低気圧のせい…。
何度再起動してみてもダメだ。
「うわーん、エンジョイ!アニマルアウトドア生活ができない!」
「
「お母さん、スマホがつながらないよう!」
「あら、壊れたのかしらね。新しい機種が出たらしいじゃないの。お誕生日に買ってあげるわ。」
「そんな問題じゃないのよ!データを引き継げなかったらどうしよう!」
「また初めからやったらいいじゃないの。無料アプリでしょ。」
今まで集めたアウトドアグッズやドレスが惜しいのじゃない。
ゲームに費やした時間が惜しいのでもない。
大急ぎで今のレベル180まで上げても、同じフレンドとはもう二度と出会えないのがショックなのよ。学校の友達のように顔や名前を知っていれば「ごっめーん、連絡先教えてー。」って聞けるのに。
『しずく』、『かじゅココ』ちゃん、『鯖子』さん、『ポメ』ちゃん、『Ryu』ちゃん、『タケシ』、『ちーくん』、『カオリン』、『ゆめたん』、『モエ』さん、『ピンクソルト』、『ユズキ』くん、『Rモンキー』先輩……昨日までは急にお別れが来るなんて思ってもみなかった。
みんなを忘れてしまわないようにノートに鉛筆で名前を書き留める。
どんなに便利な世の中になってもやっぱり紙と鉛筆が最強なのね。
翌朝、低気圧が去って清々しい青空をちらりと見て、一縷の望みを持ってもう一度ゲームを起動させてみる……。
「つながりました、ありがとーーー!!」
ゲームでフレンドに会えるのは当たり前すぎて何とも思わなかった。
嬉しくて嬉しくて、誰に送ろうか迷っていて送れなかったイベントのプレゼントをフレンド欄の上から順にあるだけプレゼントした。
当然プレゼントは足りない。でもこれから集めて順番に送ろう。
相手が私をどう思っているのかわからないけど、私は友達だと思っている。
ありがとうと伝えたいけど、きっと伝わっている。
「エンジョイ!アニマルアウトドア生活!」の世界へようこそ。
おわり
エンジョイ!アニマルアウトドア生活! 清泉 四季 @ackjm
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